米内政劣化、回復不能を危惧
Japan In-depth / 2020年11月6日 12時53分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#45
2020年11月2-8日
【まとめ】
・米大統領選、「バイデン勝利の可能性」が急浮上。
・郵便投票や都市部の開票が始まれば、トランプ票は伸び悩む。
・選挙後の米国と世界がどうなるかが重要。
今週もまた数日遅れの掲載となった。当然米大統領選挙の結果待ち理由だから、ご理解いただけると思う。幸い多くのテレビ局、ラジオ局からお声が掛かったが、今年ばかりは、「どちらが勝つか」「どちらが日本にとって良いか」といったご質問には、全て「申し訳ないけど、立場上、お答えできないんです」で通させてもらった。
昨日はある大先輩のジャーナリストとご一緒する機会があった。米主要メディアの予測はバイデン有利だったが、番組中に「トランプ俄然優勢」なる速報が流れ、「これで(激戦州は)みんな真っ赤(共和党勝利)になるぞ」と豪語されていた。だが、お気の毒にも状況は急変、日付が変わる頃には「バイデン勝利の可能性」が急浮上した。
これでは「みんな真っ赤」どころか、今頃は「真っ青」かもしれない。しかし、ワシントンで人脈を作るならともかく、東京にいて「トランプ再選」を予測できることに、一体どの程度の価値があるのか。良く分からない。「勝者が決まらない」ことを「予測」して「的中」させた人がいるとの話も聞いた。勝者なんて「いつか必ず決まる」ものだが・・・。
いずれにせよ、今回のトランプの振る舞いはある意味で予測通りの展開だ。トランプ候補が勝つには、2016年に民主党から奪取したラストベルトの激戦州で今年も勝つ必要がある。だが、投票率の上昇その他の理由で、郵便投票や都市部の開票が始まれば、トランプ票は伸び悩む。勝利宣言するなら、あの時しかないのだろう。
▲写真 トランプ大統領 出典:Flickr; Gage Skidmore
先週は「逆張り」は「邪道」であり、「多くの専門家は今年どちらが勝つか、心の中では分かっているが、言えないのだろう。4年前の苦い教訓からか、今年は両論併記でお茶を濁す人が多い」と書いた。これが最も実態に近かったと思う。いずれにせよ、大事なことは「予想が当たる」ことよりも、選挙後の米国と世界がどうなるかの方だ。
今週JapanTimesでは、先週書いた9つのシナリオのうち、実現可能性があるのは上下両院が現状維持で、大統領が再選か、交代するかの2シナリオしかないと書いた。9つ目のシナリオである「地滑り的勝利」は幻だった。これにより米内政の劣化が回復不能になることを強く危惧する。英語で申し訳ないが、時間があればご一読願いたい。
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