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米大統領選、世論調査こそ敗者

Japan In-depth / 2020年11月17日 11時0分

民主党支持の総合雑誌『アトランティック』でさえ「世論調査の大失態はアメリカ民主主義の危機となる」と論評した。そのうえで錯誤の張本人としてニューヨーク・タイムズ系、「538(FiveThrityEight)」(大手世論調査機関)、エコノミスト系の各世論調査発表を指摘していた。





なにしろこの種の調査は事前にはバイデン候補の確勝しかも圧勝を予告していたのだ。その予告を受けた民主党支持のメディアは民主党の「巨大な青い波」が全米を覆うと報じていた。トランプ大統領が制した競合州のフロリダやオハイオについても最後までバイデン勝利を予言していたのだ。





「青」とは民主党のシンボルのカラーである。





この種の読みの背後にはいまのアメリカ社会ではトランプ大統領の偏狭な統治のために人種差別や貧富の格差が深刻となったという断定があった。





だが現実の投票の出口調査ではトランプ大統領は黒人では前回の8%から12%、ヒスパニック系では28%から32%、アジア系では27%から31%にそれぞれ得票率を増やしたことが判明した。





しかも同大統領と一体の共和党は上院では多数派を保持する勢いを示し、下院では多数派の民主党から数議席を奪った。要するに「青い巨波」は打ち寄せなかったのだ。むしろ共和党のカラーの「赤い波」の勢いが目立ったとさえいえるのだ。





しかもその「青い波」が立証するはずだったトランプ統治、共和党政治の悪の弊害はそもそも幻だったのかもしれないという重大な疑問が提起されたのだ。





それでもバイデン候補と民主党は優勢である。だがこの事前の世論調査とその特定な錯誤の傾向を誇大に報じた大手メディアのあり方はアメリカの政治動向の根幹にかかわる深刻な課題なのである。





私は1976年以来、アメリカ大統領選の現地での取材は8回を重ねてきた。その経験でも今回はあまりに異例だった。その異様な現象の1つはアメリカの主要メディアのあまりに極端な民主党支援とトランプ大統領攻撃だった。





11月14日に首都ワシントンで開かれたトランプ大統領支援の大集会でも、一部に暴力行為があり、負傷者や逮捕者が出たが、負傷したのはほぼ全員、バイデン支持側の過激な分子から攻撃を受けたトランプ支持者たちだった。だがアメリカの大手メディアのほとんどはその事実を詳しくは報じていない。中立あるいは保守派支持のウォールストリート・ジャーナルやFOXテレビが報道するだけなのだ。





民主党支持の大手メディアは世論調査にも関与する。そのメディアと世論調査機関との複合体が投影するアメリカの社会や政治が果たして正確な実体なのか。





この点の慎重な再考こそが今回のアメリカ大統領選の日本側にとっての教訓であろう。その教訓は来年の大統領が誰になるかという予測をも越える長期の含蓄さえ含むだろう。





トップ写真:選挙キャンペーン中のトランプ大統領(2020年9月) 出典:Donald J. Trump facebook




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