アメリカ記者、究極の政治偏向
Japan In-depth / 2020年12月5日 7時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・MSNBCベテラン記者、バイデン氏の陰のスピーチライターで解雇。
・ミーチャム氏は自身の草稿スピーチを絶賛。
・米ジャーナリズム全体が客観性を書いている象徴。
今回のアメリカ大統領選挙では一貫して主要メディアの反トランプ陣営の偏向が目立ったが、その逆方向の民主党への極端な傾斜の実例として有力テレビ局のベテラン記者がテレビでの報道・評論の活動を続けながら実は秘密裡にバイデン候補の重要演説の草稿を書く補佐役を務めていたことが判明した。この記者は勤務していたテレビ局から解雇された。
アメリカの有力な有線ニュース・テレビ局のMSNBCは11月中旬、同局勤務のベテラン記者・評論家のジョン・ミーチャム氏との雇用関係を終了した、と発表した。
同発表は「本テレビ局の方針としてジョー・ミーチャム記者はもはやMSNBCの定期評論者としては登用しない。同記者が次期大統領のジョセフ・バイデン氏の作業班への関与を全面開示したうえであれば、ゲストとして当局の番組に出ることは歓迎される」と述べ、この措置が事実上の解雇であることを明確にしていた。
このMSNBCのミーチャム記者の解雇についてはニューヨーク・タイムズやFOXテレビがその直前に同記者が建前上は無党派のジャーナリストとして報道や評論の活動を続け、MSNBCから給料を得ながら、実際には秘密裡にバイデン選挙対策本部に加わり、バイデン氏の陰のスピーチライターとして同氏の重要演説の草稿を書いてきたのだ、と報道した。
▲写真 バイデン氏 出典:Flickr; Gage Skidmore
それらの報道によると、ミーチャム氏はバイデン候補の主要なスピーチライターであり、今年8月の民主党全国大会でのバイデン氏の指名受諾演説、同年10月の激戦州ペンシルベニア州ゲッティスバーグでの重要政策演説、さらには選挙投票後の11月7日の事実上の勝利宣言演説のすべての原案はミーチャム氏が中心になって書いたという。
バイデン選挙対策本部のTJ・ダッキオ報道官はこの指摘について「バイデン候補は演説は基本的に自分で考えるが、その過程では多くの人物たちに相談する」とだけ述べ、ミーチャム氏の草稿書きをとくに否定しなかった。
ミーチャム氏自身はバイデン陣営への参画を認めたが、その役割をニューヨーク・タイムズなどの報道が明らかにするまでは一切、隠したままで、MSNBCのニュース関連番組に連日、登場し、中立の記者としての立場を表明したうえで、大統領選挙について論評していた。
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