「バイデンの米国」とどう向き合う?(上)【2021年を占う!】日米関係
Japan In-depth / 2021年1月2日 12時39分
「前半の2年は感染拡大阻止、そして後半の2年は本格的な経済再建が課題となる」
これ以外の予想は成り立ちにくい。
「バイデンが大統領になったら、尖閣諸島は中国領になってしまう」
などという意見もネットの一部では見られたが、これは「選挙結果は中国の陰謀」といのと表裏一体の妄想に過ぎない。11月の段階で、当時の安倍首相から祝意を贈られたバイデン自身が、
「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」
と明言している。2020年の12月に入ってから、当該海域で中国艦艇の活動が活発化したが、これは明らかに、前述の声明に対しての抗議と言うか嫌がらせだろう。
この問題以外で、中国側のバイデン政権に対する評価を見てみると、たしかに外交筋からは、トランプ政権当時の対中政策チームがタカ派で固められていたのに対し、バイデン政権のそれは外交経験豊富な「より理性的な面々」であるとして、米国との関係改善が期待できる、との声が漏れ聞こえてくる。
しかしその一方では、中国共産党の機関紙『人民日報』の姉妹紙として、主に国際ニュースを扱っている『環球時報』が、
「バイデンに過大な期待を寄せるべきではない」
とする論評を大々的に掲載した。端的に言うと、トランプ政権のようにケンカ腰にはなるまいというだけのことで、中国の貿易政策が「不公正」であるとの認識に変わりはない。それ以上に、もっぱら「貿易戦争」にしか関心がなかったトランプに対し、バイデンは香港などの人権問題で対中圧力を強めてくることが懸念される、という論旨である。
▲写真 香港民主派のデモと対峙する警察隊 2019年8月 出典:Studio Incendo
私が読んだのは英語版ウェブサイトの記事であることを明記しておくが、まさか中国語版と180度違う論説など掲載されていないだろう。
とどのつまり中国共産党の目にバイデン大統領は、
「考えようではトランプ以上に嫌な相手かも知れない」
と映っているのだ。日本では意外に思われるかも知れないが、古典的なアメリカン・デモクラシーを信奉する政治家は、むしろ民主党に多いのである。だからこそ、
「歴史的に、大戦争は必ず民主党の大統領が引き起こしてきた」
などと言われるのだが。
以上を要するに、トランピストが言う「バイデンは中国の手先」という評価は事実に合致せず、言われているほど中国に対して融和的ではないことは確かだが、同盟国たる日本に対し、より大きな経済的・軍事的負担を求めてくることに変わりはないだろう。これも選挙結果に関連して述べたことだが、トランプとバイデン、どちらが大統領になろうが、日本にとって有益なことばかりではないし、それこそ「過大な期待は禁物」なのだ。
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