中・豪州関係さらに悪化「2021年を占う!】中国
Japan In-depth / 2021年1月6日 15時43分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
「澁谷司の東アジアリサーチ」
【まとめ】
・「新型コロナ」原因究明提唱機に中豪関係は急速に悪化。
・実は豪“親中”前政権から中豪関係は悪化していた。
・中国にとって豪は戦略的に重要だが、関係改善の兆しなし。
今年(2020年)は中豪関係が急速に悪化した年である。
4月、スコット・モリソン豪首相が「新型コロナ」原因究明のため、中国へ“独立”した調査団派遣を提唱した。早速、成競業駐豪中国大使がそれに反発し、オーストラリア産ワインと牛肉の輸入制限を示唆した。翌5月、北京政府は、豪産大麦に高関税をかけている。
▲写真 菅首相との会談に臨むモリソン豪首相(2020年11月17日 首相官邸)
出典:首相官邸facebook
また、同月、習近平政権はオーストラリアの食肉処理大手4社に対し、輸入停止措置を取った。その4社は牛肉の対中輸出の35%を占めていたので、豪食肉業界は打撃を受けている。
翌6月、「新型コロナ」の世界的流行下、習近平政権は自国民に対し、オーストラリアへ旅行しないよう警告を発した。豪州で最も多い外国人観光客は中国人である。オーストラリア統計局が2019年半ばに発表した数字によれば、中国からの観光客は年間143万人を超え、海外観光客の15%を占める。また、中国観光客がオーストラリアで消費した金額は120億豪州ドル(約9,438億円)を超え、全体の消費の27%に達するという。
▲写真 中国の習近平国家主席
出典:中国政府ホームページ
更に11月末、中国外務省の趙立堅副報道局長が、オーストラリア軍兵士が子供にナイフを突き付けている写真をツイッターへ投稿した。豪軍兵士によるアフガニスタンでの住民殺害を批判する目的だったという。これが、中豪関係を決定的に悪化させた。
@zlj517のツイート
https://twitter.com/zlj517/status/1333214766806888448?s=20
モリソン首相はオンラインでの緊急記者会見を開き、投稿写真は偽造された画像だと断定し、「中国政府は恥じるべきだ」として謝罪と投稿の撤回を求めた。
他方、翌12月14日、豪州『オーストラリアン』紙は、中国共産党員195万人分の情報が記載された公式のデータベースを入手したと報じた。その分析結果によると、 各国が上海に置いている公館や世界的企業に、多数の中国共産党員が勤務している事が判明した。
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