労働党大会で陥落した金与正
Japan In-depth / 2021年1月19日 19時14分
この規約改正では、権力の一層の集中を図る一方で、金正恩の健康不安を考慮して、負担軽減を図る項目が盛り込まれた。例えば金正恩総書記の司会権を政治局常務委員に委任できるようにしたことだ。この点について規約では「党首班の革命領導をさらに円滑に補佐し、党の事業と党活動をより素早く進めていくための現実的な要求を具現したもの」と説明している。
党の最高指導機関である政治局の名称はそのままで、政治局委員は19名、候補委員は2名増えた11名の計30名となった。政務局から変更となった執行機関の書記局は書記が8人に絞り込まれた。
3、人事でのサプライズは、趙甬元の垂直上昇と金与正の陥落
今回選ばれた政治局委員と書記局委員で最大のサプライズは、組織指導部第1副部長趙甬元(チョウ・ヨンウォン)の垂直上昇と、それに反比例した金与正の陥落だ。
金正恩の最側近として寵愛を受けてきた趙甬元は、党7回大会で党中央委員となったばかりの1957年生れの人物である。金日成総合大学を卒業したエリートだが、脱北した彼の同級生の話では、政治経済学部出身ではなく物理学部出身とのことだ。そうしたことからITにも詳しいらしい。
▲写真 政治局常務委員に選出された趙甬元氏 出典:Wikimedia Commons; rodong
彼は今回の第8期第1回中央委員会総会で、2段階飛び越えて政治局常務委員に選出された。序列でも人民軍元帥の李ビョンチョルを飛び越えて崔リョンヘの次の第3位となった。しかし崔リョンヘは最高人民会議常任委員長という名誉職なので、実質2位ということになる。
そして党中央委員会書記と党中央軍事委員会の委員にも任命された。名実共に北朝鮮の核心的実力者となったのである。今後金正恩の第一番頭として党全般を差配するだろう。このポジションは、金与正が求めていたものだが、金正恩は渡さなかった。これで一部の専門家が騒ぎ立てていた金与正後継者説は完全に消えた。
4、8回党大会で「女人天下」は崩壊
金正恩総書記の健康悪化に伴い、一時、金正恩夫人の李雪珠、妹で組織指導部第1副部長の金与正、元カノで宣伝扇動部第1副部長の玄松月、そして外務省第1次官の崔善姫などの女性が、表舞台で活躍し、「女人天下」とまで騒がれていたが、8回大会の人事でそれは崩れた。
▲写真 左から金与正、玄松月、李雪珠、崔善姫。 出典:いずれもWikimedia Commons; 金与正、玄松月(韓国大統領府)、李雪珠(同左)、崔善姫(米国務省)
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