労働党大会で陥落した金与正
Japan In-depth / 2021年1月19日 19時14分
李雪珠は、すでに昨年1月から全く姿を見せなくなっているが、特に今回目立ったのが、金与正党第1副部長に対する処遇だった。昨年4月に金正恩の健康異常説が台頭したころには、対韓国、対米外交の前面に出るなど、国政全般に介入する姿を見せてきただけに、今大会での降格は本人にとっても大きなショックだったと思われる。
▲写真 板門店を訪れ、故金大中元大統領の李姫鎬(イ・ヒホ)夫人への金正恩氏の弔辞を韓国側に伝達する金与正氏(2019年6月12日) 出典:Photo by South Korean Ministry of Unification via Getty Images
この背景としては、金与正に対する主要幹部たちの不満と、ロイヤルフアミリーである金与正を、番頭に据えた時に起こりうる権力の亀裂に金正恩が危惧を抱いたことが考えられる。
一時、金与正が今回の党大会で昇進し、いくつかの権限を金正恩から委譲されるという観測が、しきりに韓国の国家情報院から流された。そして「委任統治」を行っているとまで主張した。
昨年8月には、国家情報院院長の朴智元が国会情報委員会でそうした発言を行い、大騒動となった。その用語自体も間違っていたが、判断も大きく間違っていた。北朝鮮の首領独裁を支える「党の唯一的領導体系確立の10大原則」の何たるかがわかっていたならこういう間違は起こさなかっただろう。
これが災いしてか、また任せられた対米、対韓国外交の失敗の故(ゆえ)かはわからないが、金与正は、今大会で政治局候補委員からも党第一副部長からも陥落し、平の副部長となった。ただ中央委員の上位にはとどまっているようだ。
1月13日には、韓国国防部の軍事パレード報道に噛みつき、「特等バカ」と口汚く罵る談話を発表していたので、遠からずカムバックがあるかも知れない。
金与正だけでなく、彼女が率いていた対韓国対米外交ラインも降格となった。党副委員長だった金英哲は、書記に横滑りできずに、統一戦線部の部長に降格された。ハノイ米朝首脳会談では、金正恩のスポークスマン役を果たしていた崔善姫外務第1次官も中央委員から候補委員に降格された。
執事役の金チャンソンを押しのけ、金正恩の行事を取り仕切っていた玄松月も、最近金正恩の近くで姿を見せていない。しかし彼女も中央委員序列30位を維持しているので、今後また登場するかも知れない。
トップ写真:総書記に就任した金正恩氏と平の副部長に降格となった妹の金与正氏(2018年4月27日 板門店での南北首脳会談で) 出典:Photo by Korea Summit Press Pool/Getty Images
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