大統領と首相とヤクザ 「引き際」について その1
Japan In-depth / 2021年1月20日 23時4分
と弁明していると聞く。一方では、一般市民を標的にしたテロ行為という、裏社会ですら前代未聞の事件だけに、警察庁幹部は前述の二人については、
「生きて娑婆へは返さない」
と発言したとも聞く。たしかに二人は74歳と64歳なので、死刑判決は考えにくいとしても20年以上の長期刑を科せられたら、その言葉通りになる可能性が高い。
念のため述べておくが、私は断じて暴力団を擁護するものではない。単に、相手が暴力団なら多少無理な法解釈で有罪判決を下してもよい、ということにはならないと言いたいだけだ。このような法解釈が通るなら、官僚や官邸スタッフの「忖度」による不正行為も、すべて首相が責任を負わねばなるまい。
こんなことを書くと、前首相と暴力団を同列に論じるのか、などというコメントがたくさん来そうだが、問題はまさにその点なのだ。
大物政治家であろうがヤクザであろうが、法の下における平等が担保されてはじめて、法治国家と呼べるのではないのか。
一方ではかなり曖昧な証拠認定でも死刑を求刑されるケースがあるかと思えば、他方では「使用者責任」が明々白々でありながら、なんのペナルティーも科せられずに済むということでは、法の支配そのものが揺らぐことになるだろう。
一昨年に東京・池袋で起きた暴走事故について、多くの人が
「上級国民は人を殺しても逮捕されないのか」
という反感を口にした。まさか、その同じ口から、
「前首相をヤクザの親玉と同列に扱ってよいはずがない」
などとは言い出さないと信じたいのだが。
(その2に続く)
トップ写真:大統領就任式前に厳戒態勢に入る州兵 2021年1月15日 ワシントンD.C. 出典:Photo by Samuel Corum/Getty Images
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