印尼で中国製の海中探査機?
Japan In-depth / 2021年1月24日 17時2分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・インドネシアの海域で正体不明の探査機が発見。
・海中ドローンのようなこの機器は中国製との見方。
・中国潜水艦の行動に必要な海底の状況などの情報収集目的か。
南シナ海南端に位置するインドネシア領アナンバス諸島の海域で正体不明の探査用機器とみられる物体が1月19日に地元漁民によって発見されていたことが分かった。
これはインドネシアの国営アンタラ通信が伝えたもので、この物体は弾丸状で尾部にはプロペラ状のものが装着されていることから地元当局などでは海中や海底の様子を探る「海中ドローン」のような探査機器ではないか、とみているという。
さらにこの機器には中国を表すとみられる刻印があることから「中国製の探査機」との見方も強まっている。
インドネシアの海域では以前にも同じような「機器」が発見されたことがあり、インドネシア周辺海域で中国がなんらかの目的で海底や海中の様子を探査している可能性が浮上している。
▲写真 インドネシア アナンバス諸島 出典:a_rabin
■中国には戦略的価値のある海域
アナンバス諸島は、シンガポールの北東約200キロ、カリマンタン島とマレー半島の間の南シナ海の最南端に位置するインドネシア領でジャマジャ島やマタン島、シアンタン島、キアブ島などがある。
アナンバス諸島のさらに北東には同じインドネシア領のナツナ諸島がある。ナツナ諸島周辺海域では以前から中国の漁船や漁船に同行する海警局船舶、海洋調査船などがインドネシアの排他的経済水域(EEZ)への侵入を繰り返し、インドネシア海軍や海上保安機構などとの間で警告、退去要請などが続いている。
警戒を強めるインドネシアはナツナ諸島に海軍や空軍の部隊を増強したり戦闘機を配置するなどして対処している。
中国は一方的に自国の海洋権益が及ぶと主張する「九段線」とインドネシアのEEZがナツナ諸島北方海域で一部重複しているとして「2国間で話し合いによる平和的な解決を求める」と提案している。
しかしインドネシア側は「中国との間には当該海域で権益が重複する事実はなく「話し合いの余地は全くない」と拒絶して中国側が求める話し合いは一向に実現していない状況が続いている。
こうした背景があることから中国にとってナツナ諸島さらにアナンバス諸島周辺の海域は「九段線」の主張に沿った根拠を探るため、あるいは中国海軍の潜水艦の行動に必要な海底の状況や潮流、海水温などの情報収集が不可欠な戦略的海域とされている。
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