日本への誤解、どう打破するか
Japan In-depth / 2021年1月24日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・年号「令和」の解釈で海外から「右傾化」などの曲解が報じられた。
・日本についてのこのような誤解、誤報に日本は長年悩まされてきた。
・グローバリゼーションが進む中、日本からの発信・反論が必要。
「令和という日本の時代の命名は日本の右傾化なのだ。なぜなら『和』は日本の軍国主義時代の昭和の『和』だからだ」――こんな解説がアメリカの大手テレビの報道で全世界に流されたらどうするか。日本として、あるいは日本国民としてどうすればよいのか。
この解釈は明らかに誤報だった。令和というのは「美しい調和」(beautiful harmony)
という意味なのだと日本政府が公式に発表している。そもそも「和」の一文字から右傾とか軍国主義を連想するという反応自体がまったくの的外れである。
だがこの誤解はアメリカの大手テレビ局のCNNが国際ニュースとして実際に報じていた。2019年4月1日に当時の官房長官の菅義偉氏が新年号を公式に発表した直後の報道だった。
「新年号の『令和』という文字は日本の権威主義的、政治的な右傾化を示している。日本の戦争の過去をより前向きにとらえる安倍晋三氏らが日本の保守主義者たちに伝える『犬笛(dog whistle)』だろう」
「犬笛」とは特定の関係者だけに通じる決起の呼び声の通信というような意味である。
そのCNNの報道はこんな解釈までをこの令和の出典源が万葉集だったことにこじつけて打ち出していた。その解釈の根拠はほとんどがアメリカのテンプル大学のアジア研究科のジェフ・キングストン教授の論評だった。
令和という年号についてはイギリスの公共放送のBBCも当初、「専制的な価値観の反映」だと示唆する報道をしていた。その根拠について「令和の令は命令の令だからだ」と指摘していた。
いずれも実態とは異なる誤報だといえよう。
日本についてのこんな誤解や曲解が日本の外部の国際社会で広く流れるとき、日本はどうしたらよいのか。これは日本の官民にとっての長年の重大な課題だった。いまも超重要な課題だといえよう。
実際に日本は誤解に悩まされてきた。誤報と呼んでもよい。とにかく事実とは異なる情報があたかも事実であるかのように流される現象である。この現象を正面からとらえ、その原因、理由、それに対する対応の方法などを立体的に報告した画期的な書が出たので是非とも紹介したい。あえてこの書の登場を一種のニュースとして取り上げるのはこの主題自体が日本にとって国民的な課題だからである。
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