日本への誤解、どう打破するか
Japan In-depth / 2021年1月24日 23時0分
『日本を貶めるフェイクニュースを論破する!』というタイトルのPHP研究所刊の単行本である。著者は日本発の英語版ニュース・評論のネットメディアの『Japan Forward』編集部である。このメディアを運営する日本、アメリカ、イギリス、オーストラリア、イタリアなど出身のジャーナリストや学者が集団で著者となったユニークな書だといえる。
▲図 「日本を貶めるフェイクニュースを論破する!」(PHP研究所刊) 出典:PHP研究所
実は私自身もこのJapan Forwardの特別顧問として、ときおり意見を述べるという立場にある。
その私がこの場であえてこの書の解説をするのは、私自身、長年の国際報道で日本に関する誤解や偏見に悩まされ、事実に反する断定と戦うという体験を重ねて、このテーマの重要性を痛感してきたからだ。
日本に関する国際的な誤認は実に数多く、しかも日本の国家や国民を貶め、傷つけるという点では深刻だった。たとえばこんな例があった。
「日本はアジアの一般女性を軍隊により強制連行し、性的奴隷としたのに、謝罪も賠償もしていない」
「靖国神社に参拝する日本の政治家は侵略戦争を賛美し、また侵略を計画している」
「日本は使用済み核燃料からのウランを貯めて、核武装を意図している」
「日本人は人種偏見が強く、中国や朝鮮半島の出身者を差別している」
「日本ではいま政府の言論統制が厳しく、報道の自由も表現の自由も弾圧されている」
「日本は中国では南京での大虐殺など大規模な残虐行為を働き、反省をしていない」・・・・
以上のような「誤報」であり、「誤認」である。そこには無知や偏見、独善からの偶然の誤報もあるし、日本への悪意や敵意が根源となる意図的な故意の誤報もある。
この『日本を貶めるフェイクニュースを論破する!』はそのタイトルの言葉とおり、この種の誤報、つまりしフェイクニュースの実例を多数、紹介し、その誤りを指摘し、されになぜそんな誤りが生じるのかを分析したうえで、その誤りに対する訂正や否定のための反論の方法までも示している。そのうえに元となる誤報や誤認の実例を出典どおりの英語の記述で紹介している点も特徴だといえる。英語の勉強にも大いに役立つわけだ。
内容としてはJapan Forward がこの3年余り、掲載してきた記事を拡大し、更新した部分が柱となった。その作業ではアメリカとイギリスの大学で研究や教育を重ね、日本の各大学でも長年、教鞭をとった文化人類学や政治学専門のアール・キンモンス教授が中心となった。
▲写真 アール・キンモンス教授 出典:イギリス研究センター
グローバリゼーションと日本、世界のなかの日本、国際社会と日本というテーマを背景に日本からの発信、日本の反論、日本の説明というような命題を考える向きにはぜひともしてもらいたい問題提起の書だと思う。
トップ写真:アール・キンモンス教授 出典:イギリス研究センター
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