「公助しない」政治家は税金泥棒(下) 「引き際」について 最終回
Japan In-depth / 2021年1月29日 23時37分
詳細と言うか、具体的な経緯まではよく分からないのだが、財政規律より、むしろ市場に大量の通貨を流し込んでインフレを惹起し、デフレから脱却しようという政策(=アベノミクス)を標榜する政権の登場に、財政健全化を金科玉条とする財務官僚の多数派は危機感を抱いたに違いない。
そこで、元首相として自民党内で影響力を保っていた麻生氏を財務大臣の地位につけることを通じて、かねてからの懸案だった消費税の増税だけは何とか実現しようという、いわば「名を捨てて実を取る」戦略をとったのではないか。
その前提で考えれば、麻生大臣の「転向」も分かりやすい話になってくる。本当のところ彼には、経済政策に関する定見と呼べるようなものはなく、人気取りに役立つと見れば財務省を非難しつつ給付金を出すが、副総理兼財務大臣のポストをちらつかされたら、あっさり財務官僚べったりへと寝返るーーそのレベルの政治家だったということだろう。
冒頭の発言は当然ながら炎上したが、いわゆるネット世論の常として、
「今日明日の生活に困っている人が、ご子孫の借金の心配などすると思うのか」といったレベルの、感情的な意見が多い。
感情的になるのも無理はないと思えるが、やはりメディアで働く者はいま少し冷静でなけらばならない。麻生発言のどこがおかしいのかを検証してみよう。
▲写真 日本銀行 出典:Carl Court/Getty Images
まず国債の発行残高は、一度は彼が正しく指摘した通り(苦笑)、国の借金と決めつけるべきではない。たしかに世界には借金で首が回らなくなったような国がいくつもあるが、それらはすべて、外国の投資マネーに国債をゆだねた国である。
この点わが国では、前述のように国債の半分を日銀が引き受けているので、言い換えれば「半分はすでに返済済み」なのである。
もちろん、半分は半分に過ぎないので、いくら国債を発行しまくろうが、我が国の財政は千代に八千代に安泰だというわけには行かない。現実問題として国債の利払いは国家予算の8%を超えようとしているし、日銀引き受け以外の半分のさらに半分、およそ25%は海外の投資マネーの手中にある。
そうではあるのだけれど、現在のような「国難」に際して、100兆円規模の財政出動を行ったところで、すぐにわが国の財政がどうこうなるわけでもないし、次世代に甚大な影響を及ぼすとも考えにくい。
ここはあえて借金という表現にこだわって話を進めるが、国債の発行残高と言うものは、個人や法人の借金(ローンや融資)と違って、返済期限が定められたものではない。しかも、近い将来に返済困難な状況になりそうな場合には、必ず金利が上昇する(高金利を約束しなければ国債が買われなくなる)から、その時点で緊縮財政に切り替える余地もあるのだ。
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