このままだと尖閣諸島は奪われる
Japan In-depth / 2021年2月12日 13時21分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国・海警法施行で米専門家が日本に警告。
・敏速で実質ある対抗措置なければ、中国は必ず尖閣奪取進める。
・日本は、主権のためのリスク冒す意欲を誇示せねば、負ける。
中国が日本固有の領土の沖縄県石垣市の尖閣諸島への武力攻勢をまた一段と高めてきた。
中国海警の武装艦艇による尖閣周辺の日本領海への侵入は頻度を増す。そのうえにこの2月1日には中国は一方的な国内法「海警法」を施行して、この日本領海でも海警艦艇に武器使用を認めるという侵略的な姿勢を強めた。
日本はどう対応すべきなのか。
日本では政府首脳も含めて具体的な対策を明確に語る識者は皆無に等しい。日本の主権の一部を武力で奪われるという事態が目の前に迫っているのに、文字通りの右往左往なのだ。言葉のうえでは「遺憾」「懸念」「許さない」「国際世論に訴えて」という空疎な表現だけが飛びかう。だが具体策の提案は出てこない。
そこでアメリカ側の専門家に意見を聞いてみた。本来はアメリカがいかに同盟国であっても主題は日本の主権、日本の領土なのである。だから他国に依存すること自体が正道ではないだろう。
だが悲しいことに、いまの日本は自国の防衛をアメリカという他国に頼っている。尖閣諸島の防衛も同様である。菅義偉首相がバイデン新大統領との電話会談でまっさきに「アメリカは尖閣諸島に日米安保条約第五条が適用されるとみなしている」という言葉をとりつけ、大きな安堵をみせたのもその現実の反映だった。
だからアメリカ側の見解は重要なのである。
▲写真 尖閣諸島周辺において領海侵入を繰り返す中国海警局の公船(海上保安庁提供) 出典:令和元年版 防衛白書
「日本が実質のある対抗措置を敏速にとって押し返さなければ、中国は必ず尖閣諸島の日本の主権の奪取をさらに進めてくる」
アメリカの中国海洋戦略研究の権威トシ・ヨシハラ氏が中国の最近の海警法施行についてこんな警告を発した。
ヨシハラ氏といえば海軍大学校の教授を長年務め、いまはワシントンの安全保障研究の大手機関「戦略予算評価センター」(CSBA)の上級研究員である。中国に精通した日系米人学者としてとくに中国の海洋戦略の研究では全米でも第一人者の定評がある。
▲写真 トシ・ヨシハラ氏 出典:「戦略予算評価センター(CSBA)」ホームページ
尖閣問題についてもヨシハラ氏は中国側の戦略目標を単に領土の軍事拡張だけでなく東シナ海の制覇から米軍の行動の封じ込めと特徴づけてきた。昨年は尖閣に関する一連の研究報告書で、中国海軍の戦力が日本の海上自衛隊を大幅に上回った結果、中国側では尖閣の軍事奪取も米軍の介入を阻んだまま達成できるという思考が強くなったことを指摘していた。
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