このままだと尖閣諸島は奪われる
Japan In-depth / 2021年2月12日 13時21分
ヨシハラ氏はその報告で中国軍が尖閣諸島を4日足らずで完全に軍事占拠できるという具体的な作戦案を中国側の軍事専門家2人が公表したことも伝えていた。
ヨシハラ氏のこのあたりの報告や見解は一冊の単行本として2020年10月に日本でも出版された。『中国海軍vs.海上自衛隊』(ビジネス社)という書である。海上幕僚長だった武居智久氏が鮮やかな翻訳と説得力のある解説を担当していた。
そうした研究実績を有するヨシハラ氏に中国の今回の海警法施行についての見解を問うてみた。尖閣の究極の防衛をアメリカに依存する日本にとって米側の対応は致命的な比重を持つからだ。
ヨシハラ氏は以下の骨子を語った。
「国内法を使って対外的な領土の主張の拡大を進めることは中国の常套手段だといえる。南シナ海の全域や尖閣諸島の領有権を一方的に主張した1992年の領海法、台湾への武力行使とその領土奪取を正当化した2005年の反分裂国家法などはその代表例だ」
「その一方、国際政治では国家の主権と武力行使の権利は緊密に結ばれている。中国が自国の主権内とみなす領域の防衛に武力を使うと宣言すること自体はその現実に合っている。ただし今回の措置は日本が年来、主張してきた尖閣諸島の主権を侵害して、その一部を削り取るサラミ作戦だといえる」
「中国は海警法施行により情勢を決定的に変えうるレッドラインを露骨に越えることなしに日本の立場を突き崩す措置をとった。その措置には尖閣情勢全体を不安定にする危険もあるわけだが、中国はそのリスクを計算の上でこの行動に出たのだ」
「もし日本が遺憾や懸念を表明するだけで、押し返しのための実質的な行動をなにもとらなければ、中国は尖閣の日本の主権を奪うための次のサラミ作戦を必ずとってくる。国家主権のためのリスクをとるという点で中国が日本より強い意欲を有する限り、日本はこの争いで負けていくだろう。それを防ぐには日本もリスクを冒す意欲を誇示せねばならない」
なんとも深刻な警告である。
尖閣諸島の施政権は明白に日本側が保ち、その防衛には自国も出動すると言明している同盟国の超党派の専門家の見解なのだ。
そのヨシハラ氏は中国の尖閣への攻勢が軍事を中心としながらも行政、法律、外交、情報、メディアなどの総合要素を含んでの日本に対する闘争だとも強調したのだった。
日本が敏速に実効のある対抗措置を取らなければ、中国は確実に次のサラミ切りに出てくる。そしてその先にあるのは尖閣諸島の軍事的な奪取であることは明白なのである。こんな状況をまさに国難というのだろう。
だがわが日本の政府も与党も、そして野党もこの国難には背を向けたという感じなのだ。
トップ写真:尖閣諸島の魚釣島 出典:海洋政策研究所 島嶼資料センター
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