震災10年 自分を責めないで
Japan In-depth / 2021年3月14日 18時44分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・震災から10年、自分を責め続けている被災者の遺族はまだ多い。
・友人、家族、ペットの死で人は自責の念にかられがちだ。
・誰かに話すこと、私たちが話を聞く事が大事だ。
震災10年ということもあり、どのテレビ局も震災特集を流している。被災者の遺族の方々を追う企画も多い。
何本かの番組を見ていて、自分を未だに責めている人がこんなにも多いのか、と衝撃を受けた。
「なぜあの時助けてあげられなかったのか」・・・「もっと話をしておけばよかた」・・・
そんな後悔や悲しみがないまぜになった感情が浮かんでは消え、浮かんでは消えの10年だったのだろう。
ふと我が身を振り返ってみた。
2018年の春は悲しみに満ちた季節だった。3月に闘病していた友人がこの世を去った。その前の年の6月に結婚したばかりだった。彼女に頼まれて私が司会をした。
「考えたんだけど、やっぱり安倍さんに司会してもらいたいの」
彼女は重い病気で数年間闘病していた。あらゆる治療を受け、私は何回もお見舞いに行った。その度に驚くべき生命力で退院し、普通の生活を送っていた。そしてついに最愛の人と結ばれたのだ。披露宴の直前まで自ら準備に奔走した。無理すんな、と言っても絶対に言うことを聞かない子だった。
披露パーティーの間、彼女は本当に幸せそうだった。会場は高層階にあるレストラン。夕陽がとてもきれいだったのを覚えている。
幸せな新婚生活を送っていたのに、年明け、突然、帰らぬ人になってしまった。まだ26才だった。
その悲しみが去らぬうち、翌月の4月に母が逝った。100才になり、記憶力は衰えていたとはいえ、会話は出来ていた。それが介護施設の部屋の中での転倒で昏睡状態となり、そのままこの世を去った。
「オリンピックまでは大丈夫かしらね」
「全然大丈夫だよ」
そう言って笑っていたのに。
さらに翌5月、母の命日と同じ日に愛猫が亡くなった。まだ13才だった。
その半年程前、よだれが出ているのでおかしいと思い、かかりつけの動物病院に行ったら、上顎の悪性の扁平上皮ガンらしいことがその場で分かり、余命4カ月と宣告された。「抗がん剤や放射線治療はQOLが下がるからお勧めしません」と医者は言った。
それから週に2,3回免疫力がアップすると薦められた椎茸エキス抽出液を飲ませに通った。冬の寒い時期、震えるネコを毛布で包んだカゴに入れて。が、最後は静かに息を引き取った。母の最後の時と同じように。
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