ベトナム戦争映画から受けた衝撃
Japan In-depth / 2021年3月22日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・ベトナム戦争映画「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」が上映された。
・米空軍空輸救助隊の兵士ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの物語。
・映画の主題は、戦場で発揮される人間の強さや弱さ。
久しぶりでベトナム戦争を主題とするアメリカ映画を観た。私自身の記者体験では戦時のベトナムでの報道活動がやはり最大の重みを持ってきたから、この映画にもつい引き込まれてしまった。この2021年3月の現在、コロナ禍の東京でのことである。
この映画は日本でのタイトルが「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」とされていた。英語の原題は「The Last Full Measure」直訳すれば「最後の完全な行動」ともなろうか。アメリカ第16代大統領のエイブラハム・リンカンが1863年に南北戦争で北軍を率いて、ゲティスバーグの大戦闘で勝利を得た際に、そこでの死者たちの霊を「最後の完全な行動による献身」として讃えた言葉に由来するという。
この映画のストーリーは事実に基づくという。
旧南ベトナムを北ベトナムの軍事侵攻から守るために1965年から介入したアメリカ軍の陸軍部隊が翌1966年に当時の南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)に近いジャングルで北ベトナム軍の精鋭に攻撃され、展開した激戦が主題である。
この戦闘で窮地に陥った米軍陸軍中隊の負傷者救出に向かった米空軍空輸救助隊の兵士ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの英雄的な行動に対して、なぜか当然、与えられるべき名誉勲章が授与されなかったことが物語の核心となる。
▲写真 米空軍空輸救助隊 ウィリアム・H・ピッツェンバーガー氏 出典:Wright-Patterson Air Force Base Public Affairs / US Air Force Photo
その戦闘で空軍兵士のピッツェンバーガーが救援のヘリから地上に降りて、陸軍将兵とともに戦って、何人をも救い、自分は戦死してしまう。この出来事を33年後の1999年に空軍省の気鋭の中堅幹部ハフマンが再調査にかかることで、物語が前進する。その過程では当時のその戦闘がなまなましく再現される。
ハフマンは当時の戦闘に参加していた退役軍人たちやピッツエンバーガーの両親らに会って、真実を探る。やがて意外な実態が浮かびあがる。
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