安全神話が国難招いた(下)日本メルトダウンの予感 その2
Japan In-depth / 2021年3月23日 19時0分
その反省は生かされている、という声もある。たしかに事故後の10年で、原発の安全対策には巨額の費用が投じられ、その費用は高い電気料金という形で国民が負担してきた。また、脱炭素社会を実現するために、中長期的には原発再稼働も視野に入れるべきではないか、との議論に、一定の説得力があることは私も認める。
ただ、以下のようなことも挙げていただきたい。
石炭火力発電を代替する手段は、なにも原発だけではないだろうし、また、原発が抱える問題は事故の恐れだけではない。放射性廃棄物の処理方法が見つからず、世にいう「トイレのないマンション」の問題も、依然として五里霧中の状態ではないか。
最近ではまた、東京電力の管理下にある原子力関連施設で、不法侵入を感知できなかったという不祥事があったが、これなどはテロ対策を抜本的に見直さねばならない案件であろう。
以上を要するに、安全対策のコストまで考えたなら、原発が安価な電力源だなどとはとても言えないのだ。
それでもなお再稼働を主張する人たちは、ここはひとまず冷静になって、安全神話から離れた分かりやすい説明、具体的には原発再稼働で本当に電気料金は引き下げられるのかといった議論を、先に展開すべきではないだろうか。
安全神話の問題はもうひとつあって、それは
「日本人は優秀で、日本の技術は世界最高なのである」
という思い込みから、原発などちゃんとコントロールできると結論づけた人たちの存在である。本誌でも最近、清谷信一氏が国産戦闘機開発の問題にからんで、根拠もなく国産兵器を礼賛するテクノナショナリストの話題に触れていたが、原発でも、似たような傾向があったのだ。
この連載でも一度だけ取り上げたが、毎日万単位の人が見る大手の軍事ブログ(自分でそう吹聴していた笑)の管理人と称する人物が、事故直後にツイッターで、
「メルトダウンなんて起きるわけがない。馬鹿は黙ってろ」
などと発信してメガトン級の自爆を遂げた。どの段階で、どのような情報を根拠としてこうした暴言を吐いたのかを釈明することもなく、未だに自分のことをいっぱしの言論人だと思い込んでいるなどということは、まさかないと思うが(笑)。
今さらそんな話を蒸し返されても……と言われるかも知れないが、問題はこのような、
「日本人はなにをやらせても優秀だ。だから兵器でもなんでも国産に限る」
「原発をなくせというのは反日左翼の論理だ」
といった言辞は俗耳に入りやすく、それが、資本の論理に追従したに過ぎない安全神話を、さらに補完してきたことである。
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