受容できぬWHO武漢調査団報告書
Japan In-depth / 2021年4月2日 22時59分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・WHO調査団が「研究所発生源説」否定。中共の宣伝工作に利用されただけ
・中国を民主的で透明性のある体制に変えない限り、真相は不明のまま
・WHO調査団の報告書は「受け入れない」を国際的な共通認識に
世界保健機関(WHO)が3月30日、新型コロナウイルスの発生源の解明などを目的に今年1月から2月にかけて中国の武漢を訪れた国際調査チームの報告書を公表した。チームは17人の国際研究者と17人の中国人研究者によって構成された。
現地調査は中国共産党政権(以下、中共)の徹底した管理の下で行われ、当初からその宣伝工作に利用されるだけに終わるのではないかと危惧されていた。残念ながら危惧が現実化したと言わざるを得ない。
とりわけ問題なのは、報告書が、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から漏れ出た可能性を「極めて低い」(extremely unlikely)と結論づけたことである。同研究所は、大量感染が確認された市場から数キロの距離にある。
報告書はそう判断した理由を、同研究所が安全面で「よく管理され、所員の健康チェックもなされている」からだと説明する。
しかし国際調査チームの一員でアメリカ人のピーター・ダスザク氏は、メディアの質問に対し、中国側研究者の説明をそのまま受け入れたに過ぎない旨を告白している。なお同氏は武漢ウイルス研究所と共同研究を行ってきた過去があり、かねて「利益相反」関係を指摘されてきた人物である。いわば中共とWHOの癒着を象徴する存在と言える。
実際、武漢ウイルス研究所は、コロナウイルスに関して、危険度の高い「機能獲得」(gain of function)実験を行っていた。2018年に現場を視察した米国政府職員は、専門知識を持った技術者が不足しており、管理がずさんでパンデミックを招きかねないとの報告を上げている。
中国語に堪能なマット・ポティンジャー前大統領安保副補佐官は、3月28日、米CBSテレビのインタビューに答え、「中国政府は認めていないが、中国軍と武漢ウイルス研究所は一連の共同研究を行ってきた。我々はそのデータを持っており、私自身そのデータを見た」と証言している。
▲写真 マット・ポティンジャー前大統領安保副補佐官 出典:Publc domain / Wikimedia Commons
ポティンジャー氏はまた、米政府が得た情報によれば、武漢ウイルス研究所では、「特に、COVID-19ウイルス同様、人間の肺においてACE2受容体と結合するコロナウイルスの研究を行っていた」という。
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