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法改正が後手に回ると(上)「墓石安全論」を排す その1

Japan In-depth / 2021年4月21日 19時0分

遺族は、2人の命を奪っておいてこの量刑は納得できないとし、飲酒運転の厳罰化を訴えた。たちまち多くの支援者が集まり、署名は(SNSなどない時代だったにもかかわらず)短期間のうちに40万筆を超えたという。





一方では、この翌年にも福岡県で飲酒運転による事故で、やはり子供の命が失われた。





こうして、2007年9月に道路交通法が改正されて酒酔い及び酒気帯び運転に対する厳罰化が実現。同時に、酒類を提供した人や同乗者も処罰の対象となった。





毎度のことだが民間の動きは行政や立法府よりも迅速で、飲酒事故が社会問題化すると同時に、全国レベルで運送会社やタクシー会社が、乗務前に運転手の呼気をチェックするなどの対策に乗り出した。





唐突だが、墓石安全論という言葉をお聞きになったことはないだろうか。





今回例示したふたつの案件のように、世間を震撼させるような事件・事故が起きてはじめて関連法規の改正や警察の対応に変化が生まれる。これはちょうど墓石を積み重ねて石垣を築くようなもので、貴い犠牲の上に立って世の中が少しずつ安全になって行く、といったほどの意味である。





私は、この議論は認めたくない。





殺傷目的以外の実用性が考えにくい刃物が、どうして購入・所持できるのか。酒を飲んで車を運転してはいけないということ、またその危険性は、運転免許を取りに行く段階で充分に教え込まれていたのではないか。





2021年4月の段階でいうならば、飲酒運転は厳罰化され、いわゆる「煽り運転」も危険運転として処罰の対象となってはいるが、すでに死亡事故の例まである「ながらスマホ運転」はどうなっているのか。





これ以上の犠牲者が出てからでは遅いのだ、という理念に今こそ立ち返るべきだ、というのが本シリーズの主旨だが、ならば「墓石安全論」などまったくの妄言なのかと問われれば、あながちそうとも言えない。むしろ単純に決めつけるのも危険なのだ。次回は、その話を。





トップ写真:イメージ 出典:Christopher Furlong/Getty Images




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