米警察の射殺標的、低年齢化
Japan In-depth / 2021年4月22日 9時23分
サイカップ君たちが名うての不良少年であったことは、疑いを入れない。しかし、ホノルル市警が事件の詳細をすぐに明かせないところを見ると、発砲が正当化できないものであった可能性がある。また、百歩譲って発砲が正当化できるものであったとしても、社会として次世代の子供たちを支え、更生させる意思や努力に欠けていたのではないか。シカゴのトレード君の案件と併せ、米国社会がもう子供たちの幸福のための努力を放棄したのではないかと思わせる。
■司法と民主党が作ったディストピア社会
このような傾向には、司法の判断が大きな役割を果たしてきた。たとえば、米連邦最高裁判所は1985年の判決で、丸腰の黒人少年エドワード・ガーナー君(享年15)がテネシー州で強盗犯と誤認され、警察官に射殺された事件の判決で、「容疑者が死や重大な傷害をもたらすと信じるに足る相当な理由がある場合、射殺は合憲」とした。
これ以降、「殺されると思った」と証言すれば、容疑者が丸腰であろうが、未成年であろうが、殺害が合法とされることになったのである。「法の支配」は、警察官など公務員にも平等に及ぶはずだが、それは建前に過ぎない。仕事の基礎部分を警察に依存する検察は警察官に頭が上がらず、訴追できないし、実際に訴追はほとんどしない。訴追されても有罪になることは稀だ。米国の警官は、神のような万能感で権力を振りかざすようになった。
だが、どのような国であれ、次世代の若い人たちの幸福に関心を失った社会に未来はない。警察に殺害される未成年者たちが、有色人種に大きく偏っているのであれば、なおさらである。そのような結果を招いた「対麻薬戦争」や犯罪厳罰化の流れには、カマラ・ハリス副大統領やエイミー・クロブシャー上院議員をはじめ、民主党やその政治家たちが大きな役割を果たしてきた。警察による、未成年者を含む丸腰の有色人種の人々の射殺の大半が、民主党地域で起こっているのは、偶然ではない。
その過去に直面することなくして、問題の解決は望みようがない。しかし、厳罰化を推進した者たちは、保身の責任逃れに終始している。そのため米国では、これからも更生の可能性がある若い人たちが、警察に射殺され続けるだろう。
トップ写真:警察によりアダム・トレード君(享年13歳)が射殺された 出典:Kamil Krzaczynski/Getty Images
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