日米首脳会談の光と影(下)
Japan In-depth / 2021年4月24日 12時0分
ワインスタイン氏は安倍政権時代にできた平和安保法での日本の集団的自衛権の限定行使ではまだまだ不十分だと主張するのだった。日本の憲法については当時はアメリカ占領軍による押しつけだったにせよ、その後、日本自身で変えることができたははずだ、というわけである。
日本の軍事忌避によるアメリカとの同盟強化の遅れが日本の憲法のせいだとする指摘はなにもワインスタイン氏だけではない。ちなみに同氏は保守系の学者である。
だがバイデン政権にもきわめて近い民主党のリベラル派のベテラン下院議員も同じ趣旨の意見を議会で表明してきた。
下院外交委員会の有力メンバーのブラッド・シャーマン議員だった。カリフォルニア州選出、当選11回という古参議員である。シャーマン議員は下院外交委員会の東アジア安全保障などに関する公聴会で少なくとも2回、日本とトランプ政権の政策の両方を批判した。いずれもトランプ政権時代だった。
▲写真 ブラッド・シャーマン議員 出典:米議会下院ホームページ
シャーマン議員の指摘は同じように日本の憲法を批判の対象としていたが、表現はもっとずっと過激だった。
「日本は長年、アメリカの同盟国として米軍に防衛されてきたのに、9・11の同時多発テロのようにアメリカが攻撃されても、欧州の同盟諸国とは異なり、アメリカを助ける戦いには参加しなかった」
「アメリカ側がその点を批判すると、日本はいつも憲法の制約を理由に出してくる。だが日本側で『日本を長年、助けてきたアメリカがいま苦しんでいるのだから、憲法を一部、変えてでもアメリカを助けよう』と発言した日本の政治家は一人もいない」
こう述べたシャーマン議員は「日本が憲法を理由に有事にアメリカを助けないという現状ではアメリカは日本のために尖閣諸島を防衛すべきではない」として、トランプ政権の尖閣防衛策に反対したのだった。私は同議員のこの発言を2回とも公聴会の場の至近で聞いた。
今回の日米首脳会談の背後には実はこうした複雑多岐で歴史の長い大きな影も広がっているのである。そしてなによりもこの会談での菅首相の言明が空約束だけで終わるという事態が招きかねない日米同盟の悪化を懸念するのだ。
(終わり)
***この記事は日本戦略研究フォーラムの古森義久氏の連載コラム「内外抗論」からの転載です。上下2回に分けて掲載しました。
トップ写真:首脳会談後に共同記者会見に臨む菅首相とバイデン大統領(2021年4月16日 ホワイトハウス) 出典:Doug Mills-Pool/Getty Images
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