1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

菅首相「46%」目標とバイデン気候サミット(下)

Japan In-depth / 2021年4月24日 23時0分

フィージビリティを伴わなくても野心的な数字を国際表明し、他国の行動を促すというケリー特使のマインドセットは根拠のない▲25%目標を打ち出した鳩山由紀夫元首相のそれと重なる。鳩山元首相の目標設定は日本の自爆行為であったが、覇権国米国の気候外交のトップが鳩山由紀夫的なアプローチで他国に圧力をかけることはより有害である。









写真:訪中したケリー氏と習近平国家主席(2015年5月) 出典:Kim Kyung-Hoon - Pool/Getty Images





■ 気候サミットで勝利したのは中国





気候サミットの結果を見る限り、ケリー特使の気候外交は奏功していない。彼は気候サミットに先立ち、上海に赴き、中国の気候サミット出席と2030年ピークアウト目標の前倒しを迫ったが、ウイグル、台湾等をめぐる米中関係の悪化を背景に、中国側からの言質は何も取れなかった。





結局、習近平国家主席はサミットに出席したものの、2060年カーボンニュートラル目標も2030年ピークアウト目標も前倒しせず、わずかに2025-2030年の石炭消費抑制方針を表明したのみであった。





米国は自国の目標大幅引き上げというカードを切っても中国から何の譲歩も引き出せなかったのである。それどころか習近平国家主席は「共通だが差異のある責任」を根拠に「先進国がもっと野心レベルを高め、途上国支援を拡充せよ」と要求した。





 中国にとって2030年ピークアウト目標の前倒しは難しいことではない。地球環境産業技術機構(RITE)の分析では2030年ピークアウトは限界削減費用ゼロで達成できると見込まれている。そのカードを今回切らなかったのは、今後の交渉レバレッジを確保するために他ならない。ウイグルの人権問題、台湾問題、南シナ海等で欧米との対立が強まっている中で、気候変動は中国がポジティブな貢献を演出できる数少ない分野である。目標前倒しで欧米から他のイシューでの譲歩を確保できれば安いものである。





そもそもバイデン政権が旗を振っている2050年ネットゼロエミッションは中国にとって好都合でもある。先進国が脱炭素化を急激に進めれば、中国製のパネル、風車、バッテリー、電気自動車の商機が拡大する。





また先進国が化石燃料消費を抑制すれば、市況が軟化し、中国の化石燃料調達コストの低下につながる。更に先進国が途上国への石炭火力技術輸出を停止すれば、引き続き石炭利用を必要とする途上国での石炭火力技術市場を独占することができる。





この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください