シリア沖タンカー攻撃、攻防続く中東
Japan In-depth / 2021年4月28日 11時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2021#17」
2021年4月26日-5月2日
【まとめ】
・24日、シリア石油施設沖でイラン産原油輸送のタンカー攻撃火災。
・攻撃は長期化するイスラエル対シリア・イラン戦争の一環か。
・イラン、イスラエルの「代理戦争」エスカレートの可能性を懸念。
先週土曜日、中東で再びイラン関連のタンカーが攻撃を受けた。シリア国営通信は、24日にシリア石油施設の沖で、イラン産原油をシリアに輸送したタンカーが攻撃を受け、火災が発生したと報じた。一方、シリア石油鉱物資源省は「レバノン領海から飛来した無人航空機(ドローン)の攻撃で、火災が発生した」と発表したそうだ。
一部識者が興味深い分析を行っている。2日前の4月22日、シリアは飛来したイスラエル機を地対空ミサイルで迎撃したが、ミサイル一発がイスラエル防空システムを掻い潜って同国南部の原子力施設付近に着弾した。今回はそれに反発したイスラエルが、シリア沖に停泊するイラン関係タンカーを報復攻撃した、というのだ。
ある専門家によれば、今回の攻撃はイスラエルの「新たな挑発」であり、その「防空システムの不備が露呈」したため、「面目を躍如しようとする行為」だったという。おいおい、それって本当かい?イスラエルの攻撃は「挑発」などではなく、防空システムが「不備」だったのはシリア側であって、「面目躍如」とは無関係だと思うのだが・・・。
そもそも、イスラエルの攻撃は長期にわたる対シリア・イラン「戦争」の一環、シリア側を刺激し攻撃するよう仕向けている訳ではない。また、今回シリア側は旧ソ連の旧式中距離地対空ミサイルを使ったが、侵入したイスラエル機を迎撃できなかったようだ。恐らく、目標を打ち損じたミサイル一発がイスラエル南部に着弾したのだろう。
▲写真 ミサイル攻撃に備えるイスラエル兵(イメージ) 出典:NurPhoto/Corbis via Getty Images
ちなみに、この防空システムは西側でSA-5、ソ連・ロシアではS-200と呼ばれるミサイルから成り、シリア軍でも使われている。SA-5は本来、地対空ミサイルではあるが、射程が200-600キロもある。されば、報じられた通り、ダマスカスから300キロ南南西のイスラエル南部ネゲブ砂漠まで飛んでいった可能性は十分あるだろう。
更に、SA-5は対地攻撃にも使えるとする説がある。もし、今回シリアによる対地攻撃だったのであれば、イスラエルのミサイル防衛は機能しなかったことになる。だが、イスラエル軍機を迎撃すべくシリアが発射したSA-5ミサイルのうち、一発だけが対地攻撃用だったとは思えない。おっと、何でそんなに拘るのか、とお叱りを受けそうだ。
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