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あらためて死刑廃止論ずべき(上)「墓石安全論」を排す その4

Japan In-depth / 2021年4月28日 19時0分

翌年3月20日、地下鉄サリン事件が発生し、その後、逮捕された教団幹部の自供から、松本サリン事件の真相も明らかになったわけだが、もしも84年夏の段階で適切な捜査が行われていたなら、地下鉄サリン事件は未然に防げたかも知れないのだ。





和歌山の事件に話を戻すと、最初に集団食中毒を疑ったのは致し方ない面もあるとして、続いて被害者ひとりの解剖所見だけを根拠に「青酸カレー事件」と報じるに至ったというのは、さすがにいかがなものか。





毒物が青酸化合物であるなら、呼吸器系がまずやられるはずのところ、被害者は皆、消化器系にダメージを受けていた。それ以前に、初動捜査の段階で毒物の混入を疑うだけの知見を警察官が備えていたなら、吐瀉物の一部を10円玉に乗せて、その部分が光るかどうかを確かめれば、青酸化合物か否かの判定は容易にできたはずだ。





その後、前述のように使われた毒物はヒ素であると発表されたが、それもそれで不可思議だった。と言うのは、複数の被害者が「カレーの味が変だった」と証言していたのだが、ヒ素ならば無味無臭ではないのか。





とは言え科学的な鑑定によって、毒物はヒ素であったことは、まず否定できないもののようだ。それでもなお、この主婦を無差別殺人犯と断じた警察、検察、そして裁判所の論理には、どうしても納得行きかねる。その理由は、次回。





(その1、その2、その3)





トップ写真:1995年地下鉄サリン事件後、防護服着用での車両洗浄の様子 出典:Japanese Defence Agency/Getty Images




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