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モンデール元副大統領と日本(中)駐日大使に任命

Japan In-depth / 2021年5月5日 23時0分

そのクリントン大統領が先輩にあたるモンデール氏を駐日大使に任命したのだ。副大統領だった有力政治家が日本への大使になるという動きは日本側でも歓迎された。そしてそのモンデール氏がいよいよ大使としてまもなく日本に赴任するという時期に私は同氏と1対1の率直な会話をするという貴重な機会を得たのだった。





1993年6月23日、ワシントンの暑い夏にしてはしのぎやすい夕方だった。私はモンデール氏の駐日大使任命を祝う小規模の私的なパーティーに招かれた。ワシントンのベテラン記者、フィンレー・ルイス氏が自宅で旧知のモンデール夫妻を主賓として開いた集いだった。ルイス氏もモンデール氏も同じミネソタ州の出身だから交流が長いのだという。私はルイス氏とはホワイトハウスでの取材などを通じて、親しく話す関係だった。





ルイス氏の自宅は市内北西部の閑静な一角にある、ゆったりとした邸宅だった。きれいな花々が咲いた庭と客間とをつなげた空間にゲストたちが立つカクテルパーティーだった。日本人の参加者は私1人だけだった。





そのせいか、これから日本へ赴任するモンデール氏は到着すると、私のところにもすぐ近づいてきて、「日本の政治はものすごい変動ですね、自民党はどうなりますか」と問うてきた。当時の日本の政治は確かに混迷の極にあった。自民党の宮澤喜一首相が改造内閣に対する不信任案を可決されて、衆議院解散へと追い込まれたばかりだったのだ。





モンデール氏はさすがベテランの政治家らしく私の真正面に立ち、息づかいを感じさせるほどの近距離に近づいて、じっとこちらの目をみながら、話しかけてきた。当時の彼は65歳だったが、ダークスーツ姿の引き締まった体躯は活力を感じさせた。





私は彼に会ったら必ず聞こうと思っていた質問を口にした。





 「84年の大統領選挙中には、手厳しい日本批判を繰り返していましたが、そのような日本への認識はいまも変わりありませんか」





するとモンデール氏は一瞬、表情を引き締めた。そして一気に語った。





 「いや、当時の共和党のレーガン政権は財政赤字を急激に増やし、ドル高をもたらしたので、日本からの輸入が急増していました。そんな状態への警告が必要だったのです」





そしてモンデール氏はレーガン政権の政策への批判をさらに語った。私が知りたいと思った日本に対する見解はほとんど口にしなかった。もっともこれから日本駐在の大使になるという人物が日本への批判など述べないことは当然だろう。後から思えば我ながら愚かな質問だとは感じたが、とにかく尋ねてみるのがジャーナリストの任務だということにしておこう。





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