米雇用停滞、バイデン政権に衝撃
Japan In-depth / 2021年5月10日 7時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・4月雇用が予測を劇的に下回り、「大きな政府」策失敗の兆しとの指摘。
・平均的な失業者は毎週計620ドルの救済金受領で、職を求めないことが要因か。
・共和党は政権批判強め、バイデン政権発足以来最大の危機の様相。
アメリカの4月の雇用の伸びが予測を劇的に下回ったことで、バイデン政権の経済政策全般への批判がどっと高まった。共和党側はバイデン政権がとにかく支出だけを画期的に増し、課税を高めていく「大きな政府」策に失敗した兆しだとして政権非難を一気に強め、民主党側にとってはバイデン政権登場以来の最大の危機の様相をみせてきた。
アメリカ政府の労働省が5月7日に発表した雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比の26万6000人増とされた。この数字はアメリカ官民の専門家たちが一様に予測していた100万人増に近い97万8000人増のほぼ4分の1という激減だった。
バイデン政権が登場して以来、この毎月の雇用統計は2月には前月比46万8000人増、3月には91万6000人増と、大幅な増加を着実に示してきた。その結果、バイデン政権はコロナ救済や経済再建のために政府支出を超大規模で増していく「大きな政府」策の成果が雇用の増大にも反映されるとして自賛するようになっていた。
そんな背景のなかでの雇用の伸びの大幅な低下はバイデン政権にとっても、アメリカ経済界全体にとっても大きなショックとなった。失業率も3月は6.0%となり、4月は5.8%へ下落すると予測されていたが、現実には6.1%へと上昇した。
▲写真 イメージ 出典:David McNew/Getty Images
この雇用の伸びの激減の理由について保守系のニューヨーク・ポスト紙は5月8日付の長文の分析記事で多数のエコノミストや経済界代表の見解のまとめを以下のように総括していた。
・バイデン政権が総額1兆9000億ドルの新型コロナウイルス被害者救済のための「アメリカ救済計画」によってアメリカ人労働者はコロナのために失業したと申請すれば毎週300ドルの資金を今年9月までは支給されることになった。この連邦政府からの救済金に加えて、いまの失業者は州当局からすでに毎週320ドルの救済金を得ている。
・この結果、平均的な失業労働者は毎週合計620ドルの救済資金を受領することになり、その金額は毎週40時間、働いたとすると、1時間に15ドル以上となり、これまでの最低賃金の2倍となる。だから平均的な失業労働者は職を求めず、救済資金だけを受領しているほうが有利となる。
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