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次期駐日米大使の「死んだ魚」逸話

Japan In-depth / 2021年5月16日 23時0分

エマニュエル氏側の主張によると、そのときに、その選挙区で起きたことは以下のようだった。





世論調査を得意な分野とするセクレスト氏がその選挙区での民主党候補について調査した支持率が当初の予想より低かった。その数字を受けたエマニュエル氏はなかばあきらめて、草の根での票集めのためのキャンペーン活動を縮小してしまった。ところが同候補への支持は実際にはその調査よりも高く、もしキャンペーンをもっと広めていれば当選の可能性が高かったことがわかった――





だからエマニュエル氏は仲間のはずだったセクレスト氏の仕事ぶりに激怒して、抗議をぶつけたというのだ。もっともセクレスト氏はその抗議の根拠を認めていない。





とにかく結果としてエマニュエル氏は怒りを爆発させて、セクレスト氏に抗議し、2人はどなりあいをも展開した。だがセクレスト氏も自分の非は認めなかった。その後にエマニュエル氏が怒りの集約という形で、死んだ魚を送り、そのことを自分から積極的にメディアに宣伝したのだった。





包装された長方形の箱のなかには大きなサバがほとんど腐敗した状態で入っていた。その魚とともにカードがあり、「あなたとの仕事はひどいものだった。ラーム」と書かれていた。





私は1988年といえば、長年、勤めた毎日新聞を辞めて、産経新聞の特派員となったばかりだった。まだロンドンの駐在だったが、この年のアメリカ大統領選挙からワシントン駐在を再開するようになった。それまで毎日新聞のワシントン特派員も務めていたのだ。





そしてエマニュエル氏の「死んだ魚事件」をすぐに知った。アメリカの政治の闘争はすざましいものだと感嘆した。だがそんな世界でも憎む相手に死んで腐った魚を送りつけるというのはまず他に例のない異様ないやがらせの攻撃方法だとされることを知った。





このエピソードはそれからちょうど30年後の2018年1月24日にもシカゴの有力新聞のシカゴ・トリビューンが長文の記事で詳しく再報道していた。この記事では当事者のセクレスト氏に直接、インタビューまでしていた。このころシカゴ市長となっていたエマニュエル氏が2019年の選挙で三選を目指す場合、その対抗候補になりそうな人物の陣営にセクレストが加わったことがこの記事が出る契機でもあった。





セクレスト氏はそのインタビューで「死んだ魚」について以下のように語っていた。





 「私のオフィスにある日、長方形の贈答品用のような箱が郵送されてきた。その箱の裏には『創造的な報復会社より』と書かれていた。どんな内容にせよ、『報復』という言葉は不吉なので、スタッフとともにその箱を屋外に出し、近くの駐車場で開けてみた」





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