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相馬集団接種と渋谷健司教授

Japan In-depth / 2021年5月23日 11時1分

東日本大震災後は、多くの有識者や専門家が、「司令塔が大切」「情報を一元化すべきだ」など様々な提言をしていた。震災直後から、我々のチームは福島県の浜通りで活動を続けていたが、多くの有識者や専門家は一度は見学にくるが、長期にわたり携わる人がいないことを知り呆れていた。「提言」するだけで、行動しない。被災地訪問も、なかば物見遊山だ。





コロナ対策も状況は同じだ。専門家会議の委員の医師など、議論する暇があれば、ワクチン接種でもなんでも、自分ができることをすればいいのだが、そういう人は少ない。理屈よりも現場での行動を優先する渋谷医師は例外的な存在だ。





こういう人材は一朝一夕では育たない。なぜ、このような人物が育ったのか。それは、東京大学医学部を卒業後に麻酔科を専攻し、帝京大学の故森田茂穂教授に師事したことが大きい。渋谷氏は、森田教授のことを今でも「人生の師」と称する。





森田教授の指導は独特だった。教え子には幅広い教養を求め、「バカ医者」になることを嫌った。国際的視点を持つために海外留学を奨励し、その際には、臨床医学に限らず、幅広い分野を学ぶように指導した。その門下からは、エール大学大学院で経営学修士(MBA)を取得した前出の中田善規・帝京大学教授や、シカゴ大学大学院でMBAを取得した大嶽浩司・昭和大学教授らが出ている。彼らは麻酔科医として勤務する傍ら、大学のマネージメントにも関わっている。





渋谷氏のキャリアは、彼らとは違った。彼の海外武者修行は、ハーバード大学大学院での公衆衛生学博士号取得、および2001~08年にわたる世界保健機関(WHO)でのシニア・サイエンティストや保健統計・エビデンスユニット長としての勤務だ。





WHOといえば、厚労省からの出向をイメージされる方が多いだろう。「WHO西太平洋地域事務局感染症対策部」などの肩書きは、医系技官の「定位置」だ。知人の元医系技官は「厚労省がWHOに拠出している税金で買っているようなポスト」とも言う。厚労省からの出向者は「能力はなくとも、いきなりWHOの幹部に任用される」(前出の元医系技官)。今回のコロナ対策での「元WHO医系技官・有識者」の発言を聞けば、公衆衛生の専門家としての、彼らの力量がどの程度かお分かり頂けるだろう。ご興味がある方は「PUBMED」で、彼らが過去に発表した論文を調べるといい。業績のなさに驚くはずだ。





渋谷医師は違った。彼は「叩き上げ」だ。仕事で評価され、独自の人間関係を構築した。その中には『ランセット』のリチャード・ホートン編集長や、クリストファー・マレー米ワシントン大学医学部保健指標評価研究所(IHME)教授らがいる。





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