相馬集団接種と渋谷健司教授
Japan In-depth / 2021年5月23日 11時1分
前者の影響力は、改めて説明する必要もないだろう。ホートン編集長の渋谷医師への信頼は厚い。私が、このことを痛感したのは、東日本大震災で「共闘」したときだ。
我々のチームで、原発作業員のサポートに当たっていた谷本哲也医師が、万が一の大量被曝に備えて、予め造血幹細胞を採取する必要を訴える英文の論考を書き、筆者に送ってきた。谷本医師は、『ニューイングランド医学誌』への投稿を考えていたようだ。
筆者は渋谷医師にも転送し、意見を求めたところ、そのままホートン編集長に転送したらしい。数時間後には『ランセット』誌から谷本医師のところにゲラが届き、翌日にはオンラインで公開された。『ランセット』編集部は、この論考をプレス・リリースしたようで、谷本医師のところには、世界中のメディアから取材が殺到した。後日、渋谷医師からは「あの論考の反響は大きく、『ランセット』編集部からも感謝された」と報告を受けた。その後、谷本医師たちは数名の原発作業員の造血幹細胞を採取し、保存する。
『ランセット』誌は、この続報も「コレスポンデンス」として掲載した。
本稿では詳述しないが、マレー教授は公衆衛生の世界で最も影響力がある研究者の一人だ。「世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study, GBD)」を主導するのは、マレー氏と米ビル&メリンダ・ゲイツ財団だ。この研究は『ランセット』誌が定期的に掲載しており、渋谷医師およびその門下生は、筆頭および共著者として8報に名を連ねている。
渋谷医師との付き合いを通じて、筆者は世界的な医学誌は信頼感に基づく、個人的なネットワークで動いていることを痛感した。そして、私は、そのようなネットワークの一員として認められている渋谷医師を尊敬する。
▲写真 渋谷健司医師(右)、著者(左)。福島県相馬市での住民健診にて(2015年7月19日)著者提供。
今回、この渋谷医師が福島にやってくる。前述したように、渋谷医師は勤務していた英キングス・カレッジ・ロンドンを辞して、活動の拠点を福島にうつす。英国のポストは「テニュア」と呼ばれる終身雇用だ。渋谷医師は、今回の国難に際し、ポストを投げ出して現場に飛びこんだ。50代半ばをこえ、考えるところがあったのだろう。
東日本大震災から10年、福島に世界的な人材が集いつつある。コロナワクチン接種促進はもちろん、福島が世界と繋がる橋頭堡としての活躍を期待したい。
トップ写真:福島県飯舘村の住民健診後の光景。前列右が渋谷医師、3人目が筆者(2011年5月21日)筆者提供。
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