イスラエル・ミサイル防衛網の効果
Japan In-depth / 2021年6月3日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・パレスチナ・ハマスとの戦闘でイスラエルのミサイル防衛網「アイアンドーム」が劇的な効果を発揮。
・攻撃4000発中の90%を空中で撃破し、多くの自国民を救った。
・北朝鮮や中国の短・中距離ミサイル、ロケット射程範囲の日本にとっても貴重な教訓になる。
イスラエルとパレスチナのイスラム武装組織ハマスとの激しい戦闘は5月21日にひとまず停戦となった。この戦闘で最も劇的な効果を発揮したのはイスラエル側のミサイル防衛網「アイアンドーム(鉄のドーム)」だった。
このミサイル防衛網は5月10日からの連日、文字通り雨とあられのように続いたハマス側のロケットやミサイルの攻撃約4000発のうちなんと90%を空中で撃破して、自国民の多くの生命を救ったのだ。北朝鮮や中国の多数のミサイルやロケットの脅威に直面する日本にとっても、このミサイル防衛の大成功は貴重な実例となるだろう。
ハマスは5月20日からその拠点のガザ地区からイスラエル領内に向けてロケットやミサイルの発射による攻撃を始めた。ハマスが発射したのは大多数がロケットだったが、無人機もイスラエル攻撃の一貫として発進されていた。
ロケットとミサイルとではロケットが燃料を内部で燃焼させて飛行するが誘導装置はないのに対して、ミサイルは誘導装置がついているぐらいで、その差はあまりない。
今回の衝突ではハマスが最初に攻撃をかけ、パレスチナ側のガザ地区から北側に隣接するイスラエルのアシュケルトン市などに合計約4000発のロケット類が発射された。イスラエル側もロケットや爆撃機などで反撃した。
イスラエル軍当局の発表によると、この10日にわたる軍事衝突でパレスチナ側に232人、イスラエル側に12人の死者が出た。さらに同発表によると、この戦闘ではイスラエル側はミサイル防衛網の「アイアンドーム」による迎撃でハマス側のロケットの約90%、合計3600発ほどと、軍事用無人機5機を撃破したという。
イスラエル側ではこのアイアンドームの画期的な防衛能力の発揮によって、イスラエル側だけでなく、パレスチナ側の人命の多くが救われたと述べている。イスラエル側の死者が増えれば、イスラエル軍のハマス攻撃もそれだけ拡大するから、イスラエル側の死者の減少はハマス攻撃の縮小につながる、という理屈だった。
▲写真 パレスチナのミサイル、ロケットを迎撃するアイアンドーム(イスラエル 2021年5月20日) 出典:Amir Levy/Getty Images
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