バイデン政権対中政策の弱点
Japan In-depth / 2021年6月7日 7時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・バイデン政権はトランプ前政権と同じ対中強硬との見方を政策担当者が否定。
・オバマ政権の対中政策の借用認め、対中非難は言葉だけ、行動は限定的。
・現路線では中国の膨張を抑えられないとして、修正の必要性に言及。
アメリカのバイデン政権の対中政策形成の中心人物が現在の同政権の国際協調を主軸とした中国への対応では中国の危険な膨張を抑えられないかもしれない、と語った。この高官は同時に習近平国家主席の独裁の下での中国の対外戦略はますます強硬となっており、アメリカ側の政策を修正する必要もありそうだ、とも述べた。こうした発言はバイデン政権の対中政策の弱点の認知ともいえそうである。
バイデン政権のアジア政策形成の中枢にある国家安全保障会議インド太平洋調整官カート・キャンベル氏は5月上旬、ニューヨークでの集会で同政権の対中政策と中国側の対応について率直な表現で語った。イギリスの新聞フィナンシャル・タイムズが米欧の企業代表を主対象にして開いた国際シンポジウムでの発言だった。
キャンベル氏の発言の骨子は以下のようだった。
「同盟諸国と協調して中国に対するというバイデン政権のいまの多国主義政策だけでは中国の行動を左右することはできないかもしれない。中国は逆にこれまでの危険な対外膨張などを強める可能性がある」
「アメリカを中心に多数の諸国が連携して中国に圧力をかければ、中国はこれまでの振る舞いを抑制するという希望は確かにあるが、現実には中国はまったく後退することはないとも私は思うようになった。その場合はアメリカ側は中国への対処の要素を変えねばならない」
「私は最近の中国首脳の動きをみていると、いまのアメリカ側が他の同盟、友好諸国と協調して、中国の動向への反対を表明するという政策を進めても、中国側は単にその動向を一層、強め、抑制の構えはまったくみせないかもしれないという考察を強めるにいたったのだ」
▲写真 カート・キャンベル国家安全保障会議インド太平洋調整官 出典:Junko Kimura/Getty Images
キャンベル氏のこのへんの言葉はきわめて率直であり、現実的だといえよう。アメリカが自陣営の他の諸国と協調しても、その動き自体は手段にすぎない。協調の結果、どうするかが目的なのだ。
いまのところアメリカ主体の国際連帯が具体的に中国にどんな抗議や反対の行動をとるかはみえてこない。中国への抗議や反対は言葉の水準で留まったままなのである。
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