米台中三極関係を読む(下)~中国はなお米との軍事衝突を避ける~
Japan In-depth / 2021年6月16日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・アメリカは『一つの中国』政策の柔軟で広範な解釈を進める。
・経済的利益維持のため、中国は当面、アメリカとの戦争状態は避けるだろう。
・中国は議会工作、世論工作でアメリカ国内の「反中」緩和へ努めるだろう。
ロバート・サタ―氏は米中関係のこんごの展望をとくにアメリカと台湾との関係に焦点をしぼり、語るのだった。
バイデン政権はたとえ中国の激しい反発を受けても、台湾への接近、台湾の存在自体の重視を続けていくのだろうか。
この点のサタ―氏の予測は明快だった。
サター氏:「アメリカの台湾に関するこんごの望ましい歩みとしては、『一つの中国』政策を公式に変えたり、無効にすることなしに、これまでどおりに台湾との関係をより強くする措置を段階的に、少しずつとっていくことです。バイデン政権もそうした道を前進する構えをみせています。
つまりはアメリカにとっての『一つの中国』政策の柔軟で広範な解釈を進めるということです。この現実的なアプローチはトランプ前政権によって明確に実行され、バイデン政権に引き継がれたわけです。この継承こそ、激しさを増すアメリカの中国との競合、さらには対決には欠かせない手段でしょう」
サタ―氏のこの言葉はやはりアメリカ側での「一つの中国」の骨抜き、つまりは空洞化である。しかもバイデン政権はそうした政策の選択肢をすでに決めているようだと指摘するのだ。
しかし台湾問題でのアメリカにとっての懸念は常に中国の強い反発だった。この反発はこんごも当然、予測される。しかもこの反発の背後には最悪のシナリオとして軍事力行使という可能性までが浮かんでいる。
現実に中国指導部は年来、台湾に対しては、もし台湾が一方的に独立を宣言するような場合、ためらわずに「非平和的な手段」を使ってでも、それを阻止すると言明してきた。この武力行使の基本政策はいまも変わらない。
しかも中国は軍事力の増強を重ねている。台湾侵攻にすぐ動員できる福建省内の人民解放軍の規模は増加に増加を続けている。同時に台湾を直撃できる短距離、中距離の各種ミサイルの配備も福建省を中心に増強を続ける一方である。
一方、アメリカでは軍部の代表が議会証言などで「中国軍の台湾攻撃の危険性」を訴えるようになった。
アメリカ側による「一つの中国」原則の逸脱の結果、中国の軍事力行使による反撃という事態を招くことにはならないのか。このあたりのシナリオは日本の国家安全保障にも重大な影響を及ぼすこととなる。
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