中国外相、インド太平洋戦略を非難
Japan In-depth / 2021年7月6日 11時41分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2021#27」
2021年7月5-11日
【まとめ】
・中国共産党創立100年記念式典が7月に開催さる。
・習近平氏の、習近平氏による、習近平氏のための式典だった。
・中国外相が米の「インド太平洋戦略」は「冷戦思考の復活で、歴史の後退」と非難。
中国共産党創立100年記念式典の映像を見た。北朝鮮ほど異様な光景ではなかったが、天安門広場が久し振りに祝賀ムード一色となった。それにしても、実にベタな演出ではないか。総書記一人の「中山装(人民服)」から、子供たちの大量動員まで、もう少し21世紀的な演出をするかと思ったが、「期待するだけ野暮」だった。
ちなみに「中山装」着用は総書記のみ、というのはよくある話らしい。「自らを毛沢東と同格扱いした」習近平総書記は「傲慢」という評価もやや考え過ぎだろう。また、「誰であれ中国を刺激する妄想をするなら14億中国人民が血と肉で築き上げた鋼鉄の長城の前に頭が割れ血を流すだろう」との表現を取り上げる記事も散見された。
如何にも今の中国らしい野蛮な表現だが、それで中国の政策が一層強硬化する訳でもない。いずれにせよ、「習近平氏の、習近平氏による、習近平氏のための式典」ということであり、「それ以上でもそれ以下でもない」のだろう。先週予想した通り、過去一世紀間に起きた大躍進、文革、ロクヨン等の大事件に言及はなかった。
要するに、中国を救えるのは共産党だけであり、共産党の強固な指導を堅持すべし。中国は決して「教師」のような偉そうな説教を受け入れない。国防と軍隊の近代化を加速し、人類運命共同体の構築を推進するが、他人を侵略し、覇権を追求することはない。中国人民は暴力を恐れず、外部勢力によるいかなるいじめ、圧力、奴隷のような酷使も許さない。台湾問題解決は共産党の歴史的任務であり、中国人民の強い決心、意志、強大な能力を見くびるなよ。ということ、これに尽きるだろう。
〇アジア
中国の国務委員兼外相が早速講演で、米国の「インド太平洋戦略」は「冷戦思考の復活であり、歴史の後退だ。ゴミ捨て場に一掃されるべきだ」と非難したそうだ。北朝鮮には「米国を汚く罵る」罵詈雑言を発明する専門の役人がいるそうだが、そのレベルにはまだまだだ。でも、中国は大国、もう少し「品のある批判」をやったらどうか。
〇欧州・ロシア
ロシアが黒海での軍事演習で敵船爆撃訓練を行ったという。先月、ロシア海軍はクリミア半島沖で「領海侵犯」した英駆逐艦に警告砲撃・爆撃を行ったというから穏やかではない。それにしても、イギリス海軍もやるなあ!英露対立は一昔前「グレートゲーム」といわれたものだが、その伝統は今も残っているということか。
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