スズキ、気になるインド事業の先行き
Japan In-depth / 2021年7月12日 7時11分
同合弁の生産車種は徐々に増え、累計生産台数は、1994月に100万台、2005年央に500万台、2011年3月に1000万台を突破。2015年5月に1,500万台となり、2017年2月にはモディ首相のおひざ元であるグジャラート州の工場を稼働。スイフト生産を始めた2018年6月に2000万台を達成した。インドが極度の外貨準備不足に陥いり、国際通貨基金(IMF)などの融資条件であった経済自由化に転じた1991年以降の生産台数の伸びは顕著だ。当初のスズキの出資比率は外資規制により26%だったが、同規制廃止後に50%に拡大し、2002年5月にはインド政府が国営企業の民営化推進で放出した株式をスズキが取得し、マルチ社を子会社化した。2007年秋には社名を「マルチ・スズキ」に変えている。
スズキのインド事業の今後は大丈夫だろうか。新年度入りしてからの同社の乗用車販売は、4月が前月比7.1%減の13万5879台で、シェアは51.9%と過半を維持した。5月は医療向け酸素不足に対応しての操業一時停止の影響で同75.8%減の3万2903台へと大幅に落ち込み、シェアは37.4%へと落ちた。6月の自動車販売は前年同月比43%増とするインド自動車ディーラー協会連合会の統計を紹介しながら「自動車販売に回復の兆し」といった報道(エコノミック・タイムズ紙7月10日付)も見られるが、インドは新型コロナウイルス感染者数で米国に次ぎ世界2位。収束の見通しは立たず、先行きは不透明だ。また、マルチ・スズキは、現代自動車などに比べ、SUV部門の弱さが指摘されている。SUVの国内販売は2020年度、前年度比12.1%増の106万台750台と増加している。中産階級が台頭しているインド市場の変化への対応も見逃せない。自動車メーカーも中国系を含め多彩になっている。
他の不安要因もある。インド進出を決断したカリスマ経営者の鈴木修氏は6月の株主総会後に会長職を退いた。一方、1985年にマルチの社長に就任し、日本式の経営手法導入などに尽力したマルチ・スズキ会長のR・C・ガルガバ氏は、1997年に一旦勇退したが2003年に復帰し、2007年から会長職にある。日本的経営の良さとインドでの経営リスクを知り尽くした同氏も1934年生まれと高齢。マルチの躍進を担ってきた二人の存在はあまりに大きい。鈴木俊宏社長の下での経営陣に両氏のインド事業でのノウハウが伝授されているかどうかは今後試される。
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