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TOKYO1968(下)それでも五輪は開催された 最終回

Japan In-depth / 2021年7月12日 19時0分

そのきっかけとなったのが、この年の2月26日に起きた「第一次成田デモ事件」である。ちなみに「第二次」は3月10日に起きている。





もともと農民にとっては、農地を守ることは生活を守ることであり、一方では、学生や労働者のように、逮捕されたら生活はどうなるか、といった後顧の憂いもあまりない。





いきおい反対運動も過激になったが、とりわけ第一次成田デモ事件では、反対同盟の戸村一作委員長が機動隊の暴行によって重傷を負うという事態が起きている。もともとは温厚なクリスチャンであった戸村だが、これを機に、「右の頬を打たれたら、左の頬を打ち返せ」などと武装闘争を肯定するようになっていった。





このように、今は昔、というエピソードに事欠かない1968年であったが、今も代わらないものも、いくつか世に出ている。世界初のレトルトパウチ食品で「大塚ボンカレー」が2月に発売されているし、日清食品がインスタントラーメン「出前一丁」を発売したのも同じく2月である。 自動車業界においても、トヨタ「ハイラックス」、三菱「デリカ」という代表的なミニバンが、いずれもこの年にデビューした。その後モデルチェンジを繰り返しながら、今も売れ続けている。





この年はまた、初の青年漫画誌である『ビッグコミック』が創刊された。2月29日のことで(余談ながら、オリンピックイヤーは閏年である)、当初は月間だったが、やがて月2回刊となる。この年の11月から『ゴルゴ13』(さいとうたかを)の連載が始まり、某閣僚が国際情勢を勉強するテキストだと公言するまでになった笑。現在も連載中だ。





『少年ジャンプ』が創刊されたのもこの年で、当初は月2回刊、のちに『週刊少年ジャンプ』となる。





日大闘争における機動隊員の殉職は未解決事件になったと述べたが、この年の暮れには、戦後最大の未解決事件が起きている。12月10日、都下府中市で起きた「3億円事件」だ。小学生だった私も記憶にあるが、誰も傷つけない鮮やかな手口から、犯人を英雄視する風潮があったように思う。





まことに騒然とした年で、メキシコシティ五輪が後景化してしまったのも無理はない。





あらためて、新型コロナ禍の中で東京五輪を開催して、果たして無事に終えられるのかと憂えるのは、私だけではないだろうと思えてならない。





(その1、その2、その3、その4)





トップ写真:成田空港建設反対運動 出典:Bettmann/Getty Images




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