中国核戦力増強の日米への脅威
Japan In-depth / 2021年7月13日 23時0分
その中国がいまや核戦力を大幅に増強し、アメリカとの戦略対決の構図を変えようとしている、とする警告は実はワシントンの他の大手研究機関からも6月に発せられていた。
「戦略国際問題研究所(CSIS)」が6月7日に公表した「2021年の中国の戦略と軍事部隊」という研究報告書による警告だった。
同報告書は中国の最近の軍事動向を伝え、そのアメリカにとっての意味を論じていた。同報告書は超党派の研究機関CSISのなかでも最重要な位置を占める軍事戦略研究部門においてアンソニー・コースマン氏が中心になって作成された。
▲写真 アンソニー・コースマン氏 出典:CSIS
同氏は1960年代以来、アメリカの歴代政権の国防総省や米軍統合本部の中枢にあってアメリカにとっての軍事脅威の調査、分析を続けてきた。その分野での大御所とされる。
今回の報告書も基礎情報はアメリカ政府の国防総省やCIA(中央情報局)からに加え、他の同盟国や民間機関のインプットを使ったという。
同報告書は「中国は建国100周年の2049年にはアメリカと対等の軍事超大国となることを意図している」という米側の基本の分析を示して、とくに中国の核戦力の増強を注視すべきだと強調していた。
同報告書は中国の核戦力の増強について以下の諸点を列記していた。
・中国は中期、長期に核戦力の近代化、多様化、規模拡大を図り、アメリカや周辺諸国への安全保障上の対抗ではその核戦力の潜在威力を国家の基本目標の達成手段により多く取りこんでいく。
・中国はこんご10年間に核戦力を大幅に近代化し、核弾頭数を現在の200数十から少なくとも2倍増にする計画を決めた。そのための地上発射台となるサイロの建造を急増し始めた。
・中国はこれまでの地上発射ミサイルのみに重点をおく核戦略を変えて、空中発射ミサイル、海上発射ミサイルの増強を進め、アメリカやロシアと同様の「3つの柱」による核戦力構造を整備するようになった。
・中国は核兵器使用に関して「先制不使用」の原則を掲げてきたが、現実には曖昧な部分があることを示唆し始めた。自国が最初に核攻撃を受けた時のみ核攻撃をするという原則も「警報段階での攻撃」という新概念に移行したようだ。
中国はこれまで核兵器はあくまで自国の最後の防御手段として「先制不使用」の原則を対外宣伝してきた。核兵器は敵国から核攻撃を受けた時のみに報復手段としてしか使わないと宣言して、敵国の核兵器使用を抑止するという原則とされてきた。
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