Windows11にアップグレードできない理由「セキュリティ強化」は本当?
Japan In-depth / 2021年7月14日 23時0分
一方、前述のテクニカルライターの塩田紳二氏は、「おそらくマイクロソフトは、2018年に公開されたSpectre/Meltdownと呼ばれる脆弱性に関する対策が最初からなされているIntel第8世代、AMD Zen+世代以降のCPUをWindows11のアップグレード対象にした」と推測している。Spectre/Meltdownはユーザーの知らぬ間に実行されてパソコンを乗っ取られ、その痕跡も残らない恐ろしい脆弱性だ。だが、実際にそれにより被害が出たとの報告が管見の限りではない。さらに、ディスク暗号化が行えるTPM2.0以前の脆弱性を突いた攻撃成功のエビデンスや統計もマイクロソフトは具体的に示していない。であるならば、なぜ旧型機を弾くのであろうか。
こうした中、「セキュリティの強化という名目で必要スペックを上げることで、古いパソコンは使えないと認識させ、買い替え需要を創出することにしたのでしょう」との見解も出される始末である。筆者もこの「業界による低スペックパソコン退治」という見立てに同意せざるを得ない。
■ サポート終了が最も危険を高める
Windows11へのアップグレードによるセキュリティや信頼性の強化の明確なエビデンスが示されない一方で、マイクロソフトは2025年10月にWindows10「Home」「Pro」などメインストリームのサポートを終了させると発表した。現在世界で稼働中の10億台以上ものWindows10パソコンの多くはWindows11へのアップグレードが受けられず、4年後にはセキュリティ面でのサポートが受けられなくなる。
これは重大な事象である。Windows11によるCPUの脆弱性解消やセキュアブート対応、ディスク暗号化などによるセキュリティ強化とは比較にならないほど、安全ではないパソコンが数億台単位で発生することを意味するからだ。もはやセキュアではないWindows10機を大量発生させることが、本当に「セキュリティ、信頼性、互換性の強化」をもたらすのだろうか。
マイクロソフトは多くのWindows10パソコンを切り捨てることで、セキュリティを向上させるどころか、そのリスクを増やす元凶になるのではないだろうか。従来通り、「永続的にアップグレードと脆弱性修正パッチが当てられるWindows 10」の方が、よほど安全ではないか。Windows11が多くの旧型機で十分動作する以上、アップグレード対象に含めるべきではないか。あるいは「10」のままでもよいから、セキュリティアップデートだけは継続すべきではないだろうか。
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