中国とはどんな国家なのか その2 信頼できない経済データと環境情報
Japan In-depth / 2021年7月25日 19時0分
中国政府がこれまで数十年もの間、エネルギーと環境に関するデータを一貫性をもって正確に開示してきたという記録は存在しない。逆に表面に出たのは不正で、矛盾した、さらには虚偽のデータが多かった。その種の当局の不当な態度は一部の中国国民自身によって指摘され、糾弾されることも少なくなかった。
だがここ10年ほどの間に中国社会の内部から、さらには外国からの圧力により、中国政府もエネルギーと環境に関連して、少なくとも大気の汚染度を調査し、規制する動きをとるようになった。
中国政府はこれまでエネルギーや環境に関するデータの一部を国家機密として扱う事例が多々あった。しかし他の多くの場合、その種の一貫した情報がないのは中国全土の各省を通じて、単に情報収集の仕組みができていないことも原因だった。
たとえば過去に「中国環境公衆衛生追跡システム」というプロジェクトを米中両国共同で構築する計画があったが、中国各地の省、都市、郡、町の多様な行政レベルでの環境や衛生のデータを統一された基準で収集することができない現実が判明した。
各自治体の環境や衛生の政策があまりにバラバラだったのだ。この点は重要だった。なぜなら一都市、一省の環境問題にかかわる経済決定は他の都市や省の環境状況に影響を及ぼすからだ。
たとえば一都市での大気汚染がひどくなれば、単にその都市内部の工業施設を郊外や市外に移すという措置がとられ、汚染自体への対策はとられない、というような事例が多いのだ。だから地方自治体から得られるデータでは中国の環境問題の重大性を理解することはできない。
▲写真 大規模な新興住宅地の近くで稼働する石炭火力発電所(中国・天津近郊、2013年) 出典:Photo by In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images
この点、中国の外部の研究や調査の機関が有益な役割を果たす。たとえばドイツにある「中国調査メルケーター研究所」は中国の一帯一路構想のエネルギー面での活動を自主的に調査して、「中国の同構想での支出の3分の2はエネルギー分野に投入され、その総額はすでに500億ドルに達した」という結果を得たデータベースを作成した。
中国のエネルギーと環境の現実の把握のためには外部の機関の調査や研究が決定的に重要となる。中国当局からの情報はあまりに不透明で、現実から遊離しているからだ。この種の外部の中国研究機関で信頼のおける組織としてはアメリカでもコロンビア大学、イェール大学など10組織以上が推薦できる。
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