シャレにならないユダヤ人問題 忘れ得ぬ一節、一場面 その4
Japan In-depth / 2021年7月26日 11時2分
この映画の公開に先立つこと10年、すなわち2005年には、終戦60周年記念と銘打って、TVドラマも放送された。この時は反町隆史と飯島直子が主演している。
映画でもドラマでも、イスラエルの高官が日本の外務省を訪ねてきて、
「私の命を救ってくれたセンポ・スギハラという外交官に会いたい」と申し出るが、そんな外交官はいない、と冷たくあしらわれるシーンがある。
実際に杉原は、戦後ほどない1947(昭和22)年に外務省を辞していた。詳細な事実関係まではよく分からないのだが、少なくとも当人は、本省の意向に反して多数のビザを発給した事が原因で、外務省にいられなくなったと考えていたようだ。
そして、やはり映画でもドラマでも、そのイスラエルの高官と再会を果たすのだが、ドラマでは、流暢な日本語で、「お互い、年を取りましたね」などと話しかけてくる。杉原は握手しながら苦笑いしただけだったが、反町隆史の笑顔がとてもよかった。
外務省を辞した後の彼は、商社マンとなってモスクワで長く暮らしたが、もともとロシア語が得意で、リトアニアに赴任したのも、ソ連軍の動向を探る狙いがあった。映画では、彼が優秀な諜報員の顔をもっていたことも、よく描かれている。
イスラエル政府は、ユダヤ人に対する迫害に抵抗もしくは反対した人を「諸国民の中の正義の人」として顕彰しているが、日本人では杉原だけが対象となった。
しかし一方、日本政府が公式に彼の名誉を回復したのは、2000年(!)に、当時の河野洋平外相が生誕100年を記念した顕彰演説を行った際である。
ユダヤ人問題に関して、日本政府や日本人一般の理解度は、残念ながら世界標準とかけ離れているのではないか。
(その1、その2、その3。続く)
トップ写真:国立競技場 開会式(2021年7月23日) 出典:Photo by Yuichi Yamazaki/GettyImages
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