財政赤字、気にすべきか、気にしなくてもいいか、それが問題だ
Japan In-depth / 2021年7月26日 19時0分
■ 無制限な財政赤字なら必ず起こる「借金の踏み倒し」
無制限に財政赤字を拡大していけば、将来、確実に時の権力がその借金を踏み倒さざるを得なくなる。日本では、徳川幕府がそうであったし、戦前の体制がそうであった。近代日本の場合、暴力的な権力交代時に踏み倒しが起きているので、現在の世の中ではそうしたパターンでの踏み倒しはなかなかイメージできない。しかし、世界を見渡せば、1980年代以降、南米や欧州で、政府が過去の債務の返済に必要な資金を確保できなくなるソブリン危機が起きた。それらは必ずしも暴力的な権力交代を伴っていない。
今の日本の財政再建の議論は、結局のところ、いつ起こるか分からない将来の日本のソブリン危機の確率を、制御可能な範囲に留めておくというのが本質ではないだろうか。無制限に財政赤字を拡大していけば、いつかはうまくいかなくなるという直観はある。未来の世代に大きな負担を強いても、死んだ後のことだから関係ないと突っぱねるのも無責任だ。しかし、もうこれ以上一銭も赤字を拡大してはならないと言われればそんなこともないだろうと思う。そのバランスはどう考えればよいか。
過去、財政破綻を起こした権力についてみると、今風に言えば、バランスシートが債務超過だと債権者が判断したことが引き金になっている(もちろんそんな帳簿があるわけではない)。自己資本と負債の比率であるレバレッジが大きくなり過ぎた、つまり自前のお金と借りたお金のバランスが、後者が多過ぎるかたちでアンバランスになったということだ。ここで、政府のような権力の自己資本とは何か? それは、詰まるところ、将来にわたってどれだけの資金を領民や国民から徴求できるかの価値である。
そのレバレッジを目算するのは常に難しい。政府の借金残高は、財政赤字を毎年続けていくならば次第に増えていく。一方、政府の税収は大雑把には名目GDPに比例する。だから、名目GDPがどうなるかが今後の政府の税収を決めると考えても良い。その2つの比率、すなわち「政府の借金の残高÷名目GDP」という比率が、将来にわたってどう変わっていくかを予想することで、政府のレバレッジのおおよそのイメージがつかめる。金融市場において、その比率が将来どんどん上昇して発散してしまうかもしれないという不安が広がると、国債金利は上昇し始める。より高い金利が債務不履行のリスクの見返りとなるからだ。現在、国・地方の公債等残高の対名目GDP比率という数字が公表されている。それは2020年度で約220%だ。日本政府は現在、名目GDPの2.2倍の借金を抱えている。この数字が将来どうなるか、発散しないかが、今後の財政バランスが持続的かどうかの判断において非常に重要になる。
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