財政赤字、気にすべきか、気にしなくてもいいか、それが問題だ
Japan In-depth / 2021年7月26日 19時0分
■ 公債残高の対GDP比を一定に
その比率が上昇し続けて発散すると、将来のどこかの時点でソブリン危機が起こるだろう。一方、この比率が、次第に一定の値に安定していくのなら、赤字残高が残っていても財政は維持可能かもしれない。日本政府が国債を発行している金融市場において、将来にわたる政府の資金調達能力との対比で、安全圏内だとみなされる財政赤字であれば、政府は必要な資金の調達を継続できる。そのぎりぎりの境界がどこにあるか。これは金融市場が探っていくことになるが、金融市場は時に豹変することも忘れてはならない。
以上のように、毎年のフローの財政赤字が全くなくならないと駄目かというと、そうとも限らない。ただし最低の必要条件は、政府の借金残高と名目GDPの比率が将来にわたって発散しないということだ。財政赤字はいくら出しても大丈夫だと開き直るのではなく、その条件を満たす展望を確保した上で、目の前の困ったことの解決に必要な財政支出があるなら、それこそ躊躇なく執行したらよい。それが行き過ぎと金融市場が判断すれば、国債金利の上昇というシグナルが出る。
そうだとしても、さらに問題となるのは執行の能力である。使い切れない予算案を策定して無駄遣いをされては、将来のソブリン危機の確率を高めるだけだ。また、本当に困っていることが解決できているかということこそが重要だ。がんばっている振りだけでは、困り事は解決しない。すでに計上されたコロナ対策費は有効に使われたのだろうか。コロナウイルスのワクチン接種を例にとっても、実行が円滑にできるかどうかが大事なのである。そうした公的部門の予算執行能力の評価を横に置いて、さらにいくら使うのか議論するだけでは、結局は未来の世代につけを回すだけになる。
トップ写真:日本銀行 出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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