中国とはどんな国家なのか その4 軍事力の巨大な闇
Japan In-depth / 2021年7月31日 19時0分
同様に全国人民代表大会やその他の共産党の公式の大会でも安全保障についてのデータや指標を一部、示すことはある。たとえば国内治安組織の経費の概算などだが、それもきわめて大まかで、具体性に欠ける。
中国の2021年から2025年までの中期政策大綱である第14次5ヵ年計画は中国軍を「完全に機甲化し、情報化する努力を加速する」ことをうたっていた。だがそのために必要な予算の額は不明、そもそも「機甲化」とか「情報化」とはなにを意味するのかも不明、いまの人民解放軍がどれほど機甲化、情報化されているのかも、まったく示されないのだ。
▲写真 中国の長征2号ロケットに搭載された有人宇宙船「神舟12号」打ち上げ(2021年6月17日) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images
情報の取得は中国の国家安全保障組織や中国の戦略思考、国家全体の優先事項などの理解には欠かせない。この点は各国の諜報機関がだれが、なにを、どこで、いつ、どのように、といういま現在、目前の出来事の情報獲得に集中しているため、ますます重要となる。諜報機関のそうした活動では中国の国家戦略、軍事ドクトリンの進化など中期や長期の流れについての情報は得にくいからだ。
イギリスにある民間の国際戦略研究所(IISS)は毎年、発表する「軍事バランス」で中国を含む各国の軍事関連の基礎データを公表する。兵員、戦車、軍用機、軍艦、核兵器などの数である。同時に中国軍の部隊構造や組織の変化や戦闘態勢の変遷にも光を当てている。
同様にスウェーデンにある民間のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)も毎年、世界の軍事動向についての状況を公表し、そのなかには中国の軍事経費の推定や軍備管理、兵器輸出などの情報も含まれる。
この両研究所とも中国軍の不透明性に多様な角度から挑んで、その解明をかなりの程度、果たしてきた。だがなお十分ではない。
しかしその他の各国の官民の研究機関も有益な役割を果たしているといえる。その実例としてはオーストラリアの「戦略政策研究所」、アメリカの「戦略国際問題研究所(CSIS)」「全米アジア研究部会(NBR)」などがあげられる。
しかしなお中国人民解放軍の正確な規模はつかみにくい。保有や装備の兵器類についても情報の多くは隠されている。兵器の外国への輸出も実態は不透明である。
ただし諸外国の民間研究機関による調査は中国の兵器輸出についてはかなり追跡できる場合もある。中国軍の戦略や効率化、組織改革や軍政政策などについても近年、外部からの調査がやや効果をあげてきたともいえる。
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