米、ワクチンで民主・共和対立激化
Japan In-depth / 2021年8月11日 16時13分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#32 2021年8月9-15日
【まとめ】
・日本とは逆に、ワクチンは余っているのに打とうとしない米国。
・米国では、ワクチンをめぐり、民主党と共和党で非難の応酬。
・人や国により、コロナに対する感覚やルールは様々。
17カ月振りの米国出張中、未明のワシントンでこの原稿を書いている。新型コロナワクチンは余っているのに、これを打とうとしない人々が何千万人もいる米国からみると、粛々と接種は進んでいるが、思うようにワクチンが打てない日本の方が、ずっとマトモに見えるから不思議である。
数日前に米国の一日の新規感染者数が再び10万人を超え、一週間前から40%近く急増しているのに、今日の数字をなぜかテレビは報じていない。この国では日本のように一日の新規感染者数で一喜一憂しない。無関心なのか、鷹揚なのかは知らないが、この国の「新型コロナ感覚」は人により、場所により、様々なのだろう。
今ワシントンでは日本では聞かない論争が起きている。その典型例がコロナワクチンをめぐる民主党と共和党の非難の応酬だ。ワクチン接種に前向きでないフロリダ州などで新規感染者が急増した。共和党系知事がマスクやワクチンの義務化に強硬に反対しているからだ。ここでもトランプ前大統領の影が見え隠れする。
当地ワシントンでも再びマスクをする人が急に増えたらしいが、これまた人や場所によって、マスクの着用から、握手の有無まで、千差万別だ。幸い今回は多くの対面訪問が実現したが、このままデルタ株感染が拡大すれば、来週には「雰囲気が変わるかもしれない」と言われた。筆者は運が良かったのかもしれない。
ワシントンではいつも、ホテルのTVで保守系FOXニュースとCNNなど中道リベラル局のニュース番組を15分おきに見比べている。4日前のFOXのトップニュースは「バイデン政権は南西部国境に押し寄せる新型コロナ感染の不法移民を放置」だった。新型コロナ禍が米国社会の分断を深刻化させている可能性が見て取れた。
保守派はバイデン政権を批判するが、まずはテキサス州などで米国市民のワクチン接種を義務化するのが筋だろう。だが、保守派の主張は「米国は自由の国であるにもかかわらず、連邦政府がマスク着用やワクチン接種を義務化するなら、合衆国憲法違反だ」という。なるほど、これでは論争は平行線となるのも当然だ。
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