次期FRB議長はハト派のブレイナード氏か「影の大統領」イエレン氏カギ握る
Japan In-depth / 2021年8月13日 17時0分
■ ハト派もタカ派も批判
このような実績や評価から見れば、パウエル議長の再任は問題がないように見える。しかし、民主党内では、バイデン大統領が別の人物を新たに議長職に指名するのではないかという観測が流れている。
米経済専門局CNBCの分析記事によると、パウエル氏がトランプ前大統領に指名されたという因縁(もっとも、在任中にトランプ氏は自らの意を体さず、独立した中央銀行運営を行ったパウエル氏を激しく口撃した)、そして何より、2010年に成立したドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法の定める規制を一部緩和するなど、金融業界に対する融和的な政策を推進したことが問題視されている。
加えて、FRBが新たな使命として掲げる環境問題や人種・ジェンダー・性的少数派問題への取り組みが十分ではないと見られている。早い話が、共和党員のパウエル議長は「ハト派」「進歩派」に睨まれているのである。
またパウエル議長は、「インフレ高進説」を唱えるダラス連銀のロバート・カプラン総裁やセントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁など、FRB内部のタカ派高官たちからも、予防的にテーパリングや利上げを早めない姿勢を間接的に批判されるなど、左右から挟撃される気の毒な立場にある。
■ ウォール街の懸念
こうした中、次期FRB議長の最有力候補として急浮上しているのが、過去にたびたび財務長官やFRB議長の候補として名が挙がったラエル・ブレイナードFRB理事だ。彼女は財務省勤務が長く、バイデン政権組閣の際には財務長官への指名があると見られていた。だが、バイデン大統領は経験豊かで明確な政策観を持つイエレン前FRB議長を長官に指名し、ブレイナード氏はFRB理事に留任した経緯がある。
▲写真 ラエル・ブレイナードFRB理事(写真は2011年10月25日) 出典:Photo by Alex Wong/Getty Images
しかし、今回の人事でブレイナード理事がパウエル氏の後継と目されるのは、相当の理由がある。まず、ブレイナード氏が金融業界の規制強化に前向きであることだ。これが、民主党の進歩派にウケがよい。FRBを率いる立場になれば、パウエル議長の下で緩和された規制を再び強化する方向に進む可能性がある。
またブレイナード理事は、金融政策を用いた経済格差是正の熱心な支持者でもある。もし人事が米議会で承認されれば、パウエル氏の下ではかけ声のみに近い貧困対策や環境問題への取り組みに本腰を入れるようになろう。
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