次期FRB議長はハト派のブレイナード氏か「影の大統領」イエレン氏カギ握る
Japan In-depth / 2021年8月13日 17時0分
さらに民主党内におけるブレイナード人気のもうひとつの大きな理由は、彼女が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行に前のめりであることだ。「デジタルドル」と呼ばれるFRBのCBDCは、同じくFRBが提供する無料デジタルウォレット(口座)や、2万5000ドル未満の取引に限定してエンド・ツー・エンドの支払いを24時間365日可能にするFRBデジタル決済と「三位一体」の、政府による金融サービスを構成する要素になる。
加えてCBDCは、民主党内に支持者が多い最低限所得保障の「ベーシックインカム」や恒久的な扶養子女(児童)税額控除の自動給付装置の一部として機能することが構想されており、リベラル好みの「大きな政府」と親和性の高い政策だ。
だが、FRBによる金融サービスの提供は、銀行など民業の圧迫につながりかねない。このため、規制強化・格差是正・大きな政府など左派的な政策を推進する可能性が高いブレイナード理事は、ウォール街にとってはイデオロギー色が強い「要注意人物」なのである。事実、前述のフェローリ氏は、「(功績の多い)パウエル氏は失職する恐れがある」という間接的な言い回しで、「ブレイナードFRB議長」誕生への警戒を露わにしている。
■ カギを握るイエレン財務長官
バイデン政権にとり、「ブレイナード議長」人事は、金融政策を意のままに動かせるチャンスであると同時に、金融業界を敵に回しかねないという諸刃の剣でもある。最悪の場合、新FRB体制に不満を持つ銀行勢力が共和党と結び、2022年の中間選挙と2024年の大統領選挙で民主党に対抗する事態になるかも知れない。ウォール街を味方につけられないままで、テーパリングと利上げが円滑に実施できるのかという懸念もある。
こうした中、バイデン大統領の思考と判断に決定的な影響を及ぼし得る立場にいるのが、イエレン財務長官だ。FRB議長(当時)としてパウエル理事(当時)とブレイナード理事両人の上司を務めたため、人事に関する彼女の助言には極めて重みがある。加えて、財政出動・税制改革・格差是正など一連のバイデン政権の経済政策は、マクロ経済や労働経済学が専門であるイエレン氏の政策観や主張にぴったりと沿うものであり、事実上、彼女が「バイデノミクス」を仕切っていると言っても過言ではない。
▲写真 イエレン米財務長官(2021年6月23日) 出典:Photo by Greg Nash -Pool/Getty Images
この「影の大統領」であるイエレン氏は、パウエル議長のパフォーマンスについて、「上手くやった」と評価するものの、パウエル続投を支持するかと問われた際には、「今は自分の意見を公言しない」と述べるに留めている。
イエレン氏は妥協ができる「現実派」でもある。そのため、バイデン氏に「パウエル再任・ブレイナード副議長(銀行監督担当)昇格」というアドバイスをするかも知れない。また、FRB外部から新しい人材を登用するよう助言をする可能性もある。バイデン大統領の決断を、市場や投資家は固唾をのんで見守っている。
トップ写真:パウエルFB議長(2021年7月15日) 出典:Photo by Win McNamee/Getty Images
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