ABEMAドラマ「酒癖50」小出恵介さん衝撃の復帰作
Japan In-depth / 2021年8月15日 20時0分
昨年もこんなことがあった。高知東生さんが「生き直す」という自叙伝を出版された際に、高知さんや出版社から相談され、あえて「私は薬物依存症でした」という帯コピーにしたのだが、案の定これも依存症の当事者、支援者の数名から指摘を受けた。「依存症に完治はない。過去形で言い切るのはおかしい。逆に心配だ。」といったものだ。
しかし依存症で悩むご家族などからは「依存症に完治はないと聞いて絶望した。」という声があるため、これは意図的に使ったものである。私個人としては、最近は「依存症は治る。けれども再発しやすいので日頃のケアが大事」という言い方を相手によって使い分けるようにし、依存症に対してもっと希望の持てる説明の仕方はないかと模索しているが、専門職の考えはおそらく一つにまとまることはないであろう。
知りすぎているがゆえに殻を破れないという専門性は、一般の方に広く啓発したいという大義とぶつかってしまうところがある。
ドラマ「酒癖50」は依存症の啓発ではなく、アルコールの諸問題「イッキ飲ませなどのアルハラ」「酒乱」「(飲むと気が大きくなる)無礼講」「性的被害」などを扱っているが、我々が抱えるような葛藤をぶち破り、一般向けの啓発に大いに役立っている。
これは設定が「謎のコンサル酒野 聖(さけの せい)によるアルコールを嫌いになるプログラムを受ける」というものになっている部分が大きいと思う。つまり「お酒はほどほどに飲みましょう」という予防教育的なものでも、「アルコール依存症は治療が必要な病気です」といった啓発でもなく、「酒を嫌いになる」という非現実的な設定がエンタメ化に成功したと感じる。
しかもこの謎のコンサルという非現実的な設定は、実は日本企業の未来のあるべき姿としても大きな学びがある。手法は全く違うが、海外企業では「自社内に酒、薬物、ギャンブルなどに問題のある社員にどうアプローチし、治療を促すか?」という介入の研修が人事部等の管理部門向けに行われている。このような取り組みが、日本でも企業内で進んで欲しいと私たちも数年前から呼びかけている。
しかしなんと言ってもこのドラマの真骨頂は、謎のコンサル酒野 聖を演じているのが、小出恵介さんという点である。
ご存じの通り、小出恵介さんは人気絶頂時であったにもかかわらず、未成年者との飲酒と不適切な関係で無期限謹慎処分となってしまった。そして謹慎明けの復帰作がこのドラマとなったのである。私はこの決断をした小出恵介さんやスタッフの皆様の勇気に心からのエールを送りたい。
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