NHKの奇異な言語感覚
Japan In-depth / 2021年8月26日 11時0分
「ハリス副大統領が馬にまたがり“いざ出陣”」
「ハリス副大統領が東南アジアにいわば“武者修行の旅”に出るイメージです。予定している訪問先は、『自由で開かれたインド太平洋』の構想に欠かせないシンガポールとベトナムです。両国と安全保障や新型コロナ対策それに気候変動問題なども話しあいたいとしています」
以上のような冒頭の部分でハリス副大統領が「馬にまたがり、いざ出陣」とか「武者修行の旅」という、NHKの言語感覚を疑わせる表現が出てくるのだ。これを読み上げるのはキャスターたちである。
NHK報道はさらに次のように述べていた。
「なぜ今そうした問題をハリス副大統領が話しあうのでしょうか?」
「東南アジアでも年々影響力を強める中国をけん制するねらいがあるのは明らかです。加えてバイデン政権の頭上には今、暗雲が垂れ込めています。変異株のまん延でコロナ感染が再び拡大し、アフガニスタン情勢も悪化、政権の支持率は今週初めて平均50%の大台を割り込みました」
このあたりの解説はまあ常識的だといえた。だがなぜ武者修行なのか。NHK報道は以下のように伝えるのだった。
「ナンバー・ツーのハリス副大統領も、目立った業績をあげていません。そこで、敢えて“武者修行の旅”に送り出し、彼女に乏しかった外交経験を積ませたい。そうした期待がバイデン大統領にはあるのでしょう」
▲写真 バイデン米大統領とハリス副大統領(2021年7月26日 ホワイトハウスにて) 出典:Photo by Anna Moneymaker/Getty Images
一応の理屈はあるようだ。確かにハリス副大統領はなにも目立つ実績をあげていない。メキシコ国境からアメリカへの大量の違法難民が入国してきて、バイデン政権が強固な対策をとらないために、大混乱となっている。その違法入国者対策の最高責任者にハリス副大統領が任じられたが、肝心の国境地帯に一度も足を運ばず、非難を浴びた。
ハリス副大統領はそのかわりにその種の違法入国者の発生源となっている中米諸国を訪れ、現地の首脳たちと会談した。だがアメリカの国境を違法に越えて侵入してくる中南米系の人たちの数は増える一方なのだ。
ハリス副大統領の外交経験が乏しいというのは客観的な事実である。だがバイデン大統領がハリス氏に外交経験を積ませたいから東南アジアに派遣する、ということから「武者修行」という言葉が生まれてくる発想が私には理解できない。
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