マレーシア軍南シナ海演習 中国を牽制
Japan In-depth / 2021年8月27日 17時50分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・マレーシア海軍、実弾発射を含めた本格的な軍事演習で中国を牽制。
・軍事演習では、対艦ミサイルや誘導ミサイルを命中させるなど、防衛能力を顕示した。
・中国は、インドネシアの排他的経済水域内に権益があると、一方的に主張している。
南シナ海南方海域でマレーシア海軍がミサイル発射を伴う実弾演習を実施したことが明らかになった。南シナ海では中国が一方的に主張する「九段線」に基づいて広範囲の領有権、権益圏を主張、周辺のフィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、台湾などとの間で領有権問題が存在している。
しかし中国はこうした「領有権問題」を無視するか棚上げにして、領有権争いが残る一部島嶼部を埋め立てて空港や軍施設などの建設を一方的に進めて「既得権益」「実効支配」という既成事実作りを繰り返している。
これに対しマレーシア海軍は8月7日から12日にかけて6日間、フランス製対艦ミサイル「エグゾセ」の実弾発射を含めた本格的な軍事演習を挙行、中国の一方的な行動への警戒感を強めると同時に最近の中国側の動きを牽制した。
こうした本格的な海軍の軍事演習は2014年、2019年に続くもので2020年のコロナウイルスの感染拡大以降では初めての演習となった。
マレーシア東部ボルネオ島の北西沿岸部では5月31日に中国空軍の輸送機が複数接近して、マレーシアの領空を侵犯することはなかったものの、接続空域に陣形飛行をしながら接近した。これには再三のマレーシア側の呼び掛けにも中国機が応じなかったため、マレーシア空軍戦闘機「ホーク」がルブアン空軍基地から「スクランブル(緊急発進)」して対処する事態となった。
このほか中国海警局船舶を伴った漁船群などがマレーシアの排他的経済水域(EEZ)に接近する事案が続いており、6月以降は、ボルネオ島サラワク沖で米調査会社などが海底調査を進めている海底油田に接近して「示威行動」や「挑発行動」を繰り返しているという。
★潜水艦発射対艦ミサイルも発射
地元メディアの報道やマレーシア国防当局の発表によると、軍事演習「タミン・サリ作戦」には海軍の潜水艦1隻のほか複数の水上艦艇、空軍のF-A18戦闘機4機、ヘリコプター2機などとともに兵士1000人が参加した。また海上保安庁に当たるマレーシア海上法執行機関関係者も参加したという。
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