原爆と終戦の描かれ方 「戦争追体験」を語り継ぐ 最終回
Japan In-depth / 2021年9月4日 12時18分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・『日本のいちばん長い日』、終戦直前の戦争指導者らを描く。
・戦時中の子供たちの困窮は『火垂るの墓』『はだしのゲン』が有名。
・『この世界の片隅に』、戦時中の暮らしのささやかな幸せや絆を描き、高評価。
1945(昭和21)年8月15日、大日本帝国はポツダム宣言を受諾。第二次世界大戦に終止符が打たれた。ポツダムとは、ドイツ東部ブランデンブルク州の古都で、この宣言が発せられた時点で、ソ連軍の占領統治下にあった。ちなみに欧米の歴史教科書では、戦艦「ミズーリ」の艦上で降伏文書の調印が行われた、9月2日を「終戦の日」と記載している例が少なくないと聞く。
宣言の日付は同年7月26日で、アメリカ合衆国大統領、大英帝国宰相、中華民国相当の連盟で発表され、ソ連邦書記長は後から追認し署名している。全13箇条から成るが、要は日本に対して、無条件降伏を求めたものである。
時の米国大統領フランクリン・ローズヴェルトが宣言の骨子を提案し、英国のウィンストン・チャーチルなどは、
「降伏の条件を明確にした方がより早く戦争を収束できる」
として文言の一部修正を求めたが、ローズヴェルトが譲らなかったと伝えられている。いずれにせよ日本側、とりわけ陸軍は猛反発し、政府もこれを「黙殺する」などと新聞発表することとなった。
その後、広島・長崎への原爆投下、ソ連の参戦といったように、日本はいわばとどめを刺されて、無条件降伏へと追い込まれる。
この経緯については、1967年に公開された『日本のいちばん長い日』という映画によく描かれている。原作は半藤一利氏のノンフィクション(文春文庫他)だ。
▲画像 『日本のいちばん長い日 決定版』(半藤一利、文春文庫 2006年) 出典:文藝春秋BOOKS
映画にはちらとだけ描かれているが、この年の8月に降伏することを決意せざるを得なかった最大の理由は(もちろん唯一の理由ではないが)、大凶作が予想されたからであった。天候不順に加え、農家の働き手が根こそぎ戦地に駆り出されたため、戦争が秋以降も継続された場合には、100万を超す餓死者が出るのではないか、との危惧さえあった。
「腹が減っては戦はできぬ」
とはまさしく至言で、本土決戦に備えて物資を備蓄するなど、はじめからできない相談だったのである。武器もまた然りで、核武装した軍隊を竹槍で迎え撃とうとしていた。
この記事に関連するニュース
-
戦後、日本が「分断国家」にならずに済んだ深い事情 「米軍による占領」と引き換えにソ連が得たもの
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 20時0分
-
【特集】「私たちは、同じ人間なのだから」 原爆の憎しみを乗り越えて伝えるメッセージ
広島テレビ ニュース / 2024年6月27日 7時0分
-
なぜ広島・長崎に「人類史上最悪の兵器」が落とされたのか…「降伏しない日本が悪い」というアメリカの詭弁
プレジデントオンライン / 2024年6月21日 9時15分
-
中国で抗日戦争映画が公開危機 「降伏した人物を美化するな」
共同通信 / 2024年6月20日 18時10分
-
「ほのぼのからの急転直下」 名作だけど「トラウマ」の意見も多いアニメ映画
マグミクス / 2024年6月13日 17時25分
ランキング
-
1河野太郎氏、やから発言釈明 「言葉の選び方は慎重に」
共同通信 / 2024年7月3日 20時0分
-
2“症状重く強くなることも”ダニにかまれ…被害増加、医師が注意呼びかけ、布団の中のダニ対策【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月2日 22時10分
-
3潜水艦修理契約で不正か=川崎重工、海自に金品提供疑い―防衛省
時事通信 / 2024年7月3日 19時51分
-
4「64歳まで国民年金納付」案見送りへ、負担増に国民理解を得にくいと政府判断
読売新聞 / 2024年7月3日 13時42分
-
5NYで人脈構築の小室圭さん、対照的な生活の眞子さんは「ほとんど外出せず」紀子さまが抱える“複数”の不安
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 7時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)