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「中南米の優等生」チリ、新自由主義と決別か

Japan In-depth / 2021年9月4日 19時0分

「中南米の優等生」チリ、新自由主義と決別か




山崎真二(時事通信社元外信部長)





【まとめ】





・新自由主義政策で経済成長遂げたチリ、格差是正求める声増大。





・制憲議会が発足、新憲法の起草が行われているが、左派系勢力台頭で新自由主義否定される公算大。





・11月の大統領選、誰が当選するにせよ、新憲法起草に影響必至。





 





■経済急発展するも、格差拡大





チリは過去30年間、新自由市主義に基づく市場競争と自由貿易を柱とする経済運営によって、リーマンショック後の一時期などを除き、年平均4%強の成長を維持するなど著しい経済発展を遂げた。





この間、チリの国内総生産(GDP)は10倍近くに増加、国民一人当たりのGDP(購買力平価ベース)は2万ドルを超え2010年には経済協力開発機構(OECD)に加盟した。政治面でも1990年に軍政から民政に移管後、民主体制が定着した。同国が「中南米の優等生」と称されるゆえんである。





しかし、その一方、富裕層と他の階層との所得格差が拡大、国民の半数以上を占めるに至った中間層には厚生、教育、社会保障面の不平等への不満がうっ積。こうした状況下で2019年秋以降、たびたび大規模なデモや騒乱が発生、格差拡大の大きな要因と指摘される現行憲法に代わる新憲法制定要求が一気に高まった。





昨年10月の国民投票で圧倒的多数の賛成によって新憲法作成プロセスが決まり、今年5月の制憲議会選挙を経て7月初めに同議会が発足したというのが大まかな経緯である。









▲写真 セバスティアン・ピニェラ大統領に対する抗議デモ(2021/3/5 チリ・サンティアゴ) 出典:Photo by Marcelo Hernandez/Getty Images





■新憲法に格差是正をどう盛り込むかが焦点





ピノチェト軍政期の1980年に制定された現行憲法はこれまで19回も修正されている。しかし、制憲議会は現行憲法を基礎や土台とすることなく、全面的に代わる新憲法づくりを目指す。最長12カ月をかけて新憲法草案を作成、遅くとも来年7月の第1週までには仕上げ、3分の2の賛成で承認されれば、その後国民投票にかけられる予定だ。





5月の制憲議会選では定数155議席についてあらかじめ17議席が先住民族枠として設定され、残りの議席が争われた結果、与党系の中道右派連合が37議席、中道左派連合が25議席、左派連合が28議席、急進左派を含む独立系が48議席をそれぞれ獲得した。新憲法起草ではチリの政治制度、厚生、教育、年金改革などのほか、市民の政治参加、ジェンダー平等、先住民の権利拡大といったテーマが議論の中心になる見込み。最大の焦点は社会・経済格差是正実現に向けどのような内容が盛り込まれるかだ。





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